BOSS FT-2 Dynamic Filter

販売期間:1986/10〜1988/12

これを手放したのは失敗。後悔しております。噂通りのしょぼワウで、しかしこのしょぼさこそ持ち味である事に気が付いたのは、もう売りに出した後で。

ボスには「短命モデル・ランキング」というのがあって、このFT-2は、その
輝ける第4位!
だそうな。とくべつ稀少品でもないが、やはりそう何時でも何処にでも転がっているものでもなさそうな。どうしても欲しければ改めて購入すれば良いんですが、別にそこまで積極的なわけでもなく。

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ボス製品の評としてよく言われる音しょぼい、即ち

○効果が地味・大人しい
○可もなし不可もなしの中庸路線
○使いやすく破綻がないが、これといった特徴もなく
○要するに、なんかつまらない・お子様向き

というのは、とくにカラーキャップ・4つノブ期つまりこのFT-2とかフェイザー(PH-2)、コンプ(CS-3)、ターボ族(OD-2その他)、デジ(ディレイのDD-2、コーラスのCH-1)あたりのシリーズに一番当てはまりそうな気がいたします。だいたい'85年〜メタゾネ登場までの約5年間に登場した製品群ということになりましょうか。中にはべつに音しょぼくないのもあると思うのだが、いかにも日本製家電的なチマチマした見た目の印象も悪くて(なんかロックじゃねぇみたいな)。しかもこの頃の製品には、ロングセラーになってる型番も多い。

というか、この後マルチという新たなジャンルが登場してコンパクト部門の更新ペースが鈍るのですな。

カラーキャップ・4つノブ期製品群の印象からボス=しょぼの通説化が決定的になったような気もいたします。賛否両論の絶える事がないメタゾネに対する評価も、結構これでワリ喰っちゃってるかも知れませんね。

「多機能化」と「デジタル化」もカラーキャップ・4つノブ期の特徴で、"MODE"スイッチとか"TURBO ON"とかで「1台で2台分の音色」が売りになってるものが多い。この時期には他のメーカーの多くも概ね同じ方向で新製品を開発していまして、ダブル・エフェクトとかリモート・コントロール等々のアイディア商品で、けっこう激しい開発競争が闘われていた模様です。その頃に数々生み出された、

なかなか「ユニーク」だが、
どうにも「使えねぇ」珍品奇品の数々

が、現在のエフェクター中古売り場の片隅にゴミの如く吹き溜まっている有様は、まさに「つわもの共が夢の跡」。現在から振り返って省みるに、これは「足元に置くマルチ」が普及する直前の、ごく一時的・過渡的な現象でしかなかったのが痛く空しい。とは言え流行を追うのもあきんどの宿命と、各社競って作ったわけですよ、これらマルチに成り損ないシリーズを。

ヤマハは多機能詰め込み型には手を出さなかった替わりにさらにへんなので空振り。日伸音波は「5ノブ・6ノブ奇形種」を作ってみたりと、各社の対応も色々のようで。

それでボス。とくにボスのケースは他の量産メーカー大手(日伸音波・ヤマハ・グヤトーン等)に比べ容積が少ない(ような気がする)ので、ここに多機能を詰め込むのは困難だったと思われ、ボスのケース内部は、ものによっては複雑怪奇なパズルというか知恵の輪というか、ちょっと凄い状態になっている例もございます。
他社との競争、またアマチュア・ユーザーに受けの良い製品を求める営業・企画部門からの圧力を常に受けていた(であろう)開発陣にとって技術的な興味の中心が、「いかに手際よく詰め込むか」という課題に傾き勝ちだったとしても、それは仕方がないような。仮に「出音の良し悪し」と「詰め込む事」が技術的に両立し得ず、これの二者択一を迫られた場合に「出音よりも詰め込みが優先されてしまった」というような経緯も、ずいぶん多かったのではなかろうか……などと、そんな想像をしてみたり。

しかしここでケースのデザインを変更しなかったのがボスの偉いところで、ブランド立ち上げ以来同一のケース形状で一貫した事が、今となってはボスのブランド・バリューを大きくしている最大の要因であるのも間違いのないところ。

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もうひとつ、ボス製品の「音決め」の方針の問題で、どうもボスは「エフェクターをバンドの中で鳴らした時の音」「ライブ演奏で使った場合の良し悪し」ではなく、

レコードで聴いたエレキの音を基準にしていた」

んじゃなかろうかと、ちょっとそんな風にも思えるのです。「レコードの中のエレキの音」即ちレコーディング・エンジニアが整理整頓して「2ミックスの中での落ち着き所」を作り上げた音、不用意な出っ張りや引っ込みが平坦に均され、とげ抜きされアク抜きされた、つまりこれ往々にしてロックじゃねぇな音でもあるわけですが、そういう「レコードの中のエレキの音」が、設計者の最初の構想段階のイメージ(お手本)であったり、製品の音決めの際のリファレンスになっていたりしていたのではなかろうか……このFT-2を使っているうち、何だかそんなような気がしてきたのですね。

日本のエレキ音楽は英米その他からの輸入文化であり、イノベーター達(がいじん)の後追い文化ですから、こういうある意味「逆転現象」が起こっても不思議ではない。それが良いとか悪いとかは一概には言えなくて、とくに購入対象者を広く素人愛好家に求める量産メーカであるならば、「レコードの中で鳴っている音」をお手本とする姿勢にも充分な正当は認められると申せましょう。「レコーディング工程という一段のフィルターを経たのと同じ音」を自分のすぐ目の前、マイ・アンプから出したければ、カラーキャップ・4つノブ期ボスというのは実に具合良くチューニングされている製品ではなかろうか?そういう観点からボスの音を再評価してみれば、また何か新たな発見があるのではなかろうか(さあどうであろうか)。


それでこのFT-2をちょっと使ってみた印象、一応機能面等の特徴を要約すると、

○"EXP IN"ジャックに外部ペダルを繋ぐ事で、ペダル・ワウとしても使用出来るタッチ・ワウ
○先代TW-1に"FREQ"ツマミ追加。"Q"ツマミ=TW-1の"PEAK"です。

まず最初に音を出してみて、その第一印象がとにかく「これタッチ・ワウとしてはヘタレ」なので、ついつい"SENCE"と"Q"を目一杯上げにしたくなるものです……というか僕は最初そういう設定にしてたのですが、どうもそれが間違いの元のようで、正しい使い方は、

各コントロール全てセンター(12時)の標準位置から、使用ギターに合わせ微調整

これで最適・最大の効果を得られるらしい事に気が付いて以降、「もしかしてFT-2、ちょっと良いかも?」という気がしてきたんですね。ツマミを「全てセンター」の時の音がFT-2の基本キャラで、それはどうしたってしょぼいのだから、FT-2にコテコテのワウ効果を求めるのが間違いなわけで、フィルターを効かせようとし過ぎると「低域無くなりすぎ・音量下がる・音が遠のく」で音しょぼ感が増すばかりな上、フィルターの動きも分かりづらくなって「ワウが効いてる感じがしない」という悪循環にハマってしまうようです。

そのフィルターの動き。タッチ・ワウのこの要素は製品に固有の性質で、これをパラメータとして調整出来る機種って殆どない(と思う)のですが、このFT-2のフィルターの動きのスピードは僕が今まで使った事のある製品の中では最も遅い方でして、ノリのゆるいファンク系カッティングにちょうど良い速さ。これは僕にとって◎(にじゅうまる)。
動きのスピードはちょうど良いのに、効果が浅く「こってり感」がないので×(ばつ)。

でも動きの遅いタッチ・ワウって稀少だから、「こってり感」の方には目をつむり、取りあえず手元に残しておけば良かったと後悔しているわけです。少なくともTW-1よりかはずっと使いやすい。また、新たにFT-2を買い直したとしても、フィルターの動きどうこうっていうのは個体差も大きそうで、別個体のFT-2が同じ性質のものかどうかも運次第。

結論;
ちょっとでも「良いな」と思えた機種は、必ず手許に留めておくべき。
↑これエフェクター道の基本

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「外部ペダルを繋いでペダル・ワウ」の方なんですが、これも当然ヘタレでして、少なくともジミヘン等のギョェ〜な用法はあり得ないなと。そのかわり、どう頑張っても耳に痛いというような音は出せないワウですから、チャカポコな用向きの際に「ペダルの微妙な踏み加減で耳に痛いところを避けながら使う」というような器用な技が苦手な人(俺のことだ)には良さそうです。
かかと目一杯←→つま先目一杯
の単純な往復運動でOKなのは便利かも。

ただAW-3の同じ機能がデジタル・マルチとの対照で、もはや「ただの蛇足」であるとしか感じられないのに対し、FT-2の方は時代の付いた外観や、ケースが情けないベージュ色(ももひき色)であることも併せ、なんだか「許せる・愛せる」とでも言いますか。

ちなみに外部ペダルをつないだ場合でも"FREQ"と"Q"のツマミは有効で、ペダル・ワウの操作感をある程度加減する事が可能です。

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あとは「歪みにくい」というのも良い点でした。それと関係があるのかどうか、フィルターが動く時のガサゴソ感TW-1その他と比べて少ない、滑らかなワウだったと思います。

その他、"MODE"スイッチを"MANUAL/EXP"の位置にして外部ペダルを繋がない場合、いわゆる「半止めワウ」として使用する事も可能。ただその効果は当然ショボで、なんの使い道もなさそうな音ですが、一応ご紹介。この場合"SENS"ツマミの設定は無効になり、"FREQ"と"Q"の組合せで半止めワウの音質を調整します。

とまぁ特徴もそれなりに色々あるものの、とにかくしょぼなワウですから、3ピースのバンド(ギターが一人)のバンドで、ワウで何か一発勝負に出ようという場面には絶対ダメ。その代わりギターが二人、あるいはキーボードもいるようなバンドの中、「こてこてのファンク」とかではない、ちょっとブラコン(死語)風味程度の、バンド・アレンジにワウ効果を添える程度の事をしたいような場面なら、これ程使いやすいタッチ・ワウはない。ツマミ全てセンターで取りあえずギターをつなげば取りあえずワウ風の音が出て、しかも「突然暴発して他のメンバーからイヤな顔をされる心配がない」、ボーカルの背後で「添え物的にチャカポコいってるギター」としてちょうど良い、音が一段引っ込んで脇役に徹する(しかない)ワウ。これが先に述べた「ボスの音=レコードの中の音がリファレンス」説の根拠でもあるのです。

これは結局、後日買い直しました

2006/10/26
(改)2008/03/28
(改)2010/06/19





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