BOSS HM-2 Heavy Metal

発売期間:1983/10〜1991/10

鬼のように売れたらしいですね。一世を風靡し、その人気は後継機(メタゾネ)に引き継がれ、その後は飽きられ、つまり完全に消費され尽くされ、今では中古売り場のゴミと化し。

なんですけれど、ボスの黄色系(OD-1/SD-1等)が、未だに後継機の決定版を作り出せず、過去の栄光(過大評価ともいう)に依存してるのに比べ、黒系の方はHM-2→MT-2へと順調に進化を遂げ、ボスの稼ぎ頭となった。大手メーカーの作る量産品としては、これが最も正しい姿なのであって、例えばトヨタ自動車の初代カローラが偉大な製品であるならば、このHM-2 Heavy Metalだって同じく偉大な製品であると申せましょう。現在ではとくに使い道がないからといって、あるいは中古屋がプレミアを付けてないからといって、けっしてバカにしたり過小評価してはいけません(といっても実際のところ、これの使い道なんて無いんですが)。

HM-2はボスが「音楽のジャンル名」を製品名にした最初のエフェクターなのでもありますが、これが売り出された83年とは、YAMAHA DX-7の発売された年なのでもあります。このDX-7の登場が楽器業界に与えた影響は多岐に渡るのですが、その中の一つに、
「楽器メーカーがハード・ウェアだけを売るのではなく、ソフト・ウェアと抱き合わせで販売するようになる。その端緒を開いた」
という事がある。どういう事かというと、DX-7の価格対性能比(C/P)は当時の基準からするとべらぼうに安く、誰もが欲しがったものですが、その代わり音色を作るのが史上最も難しい&面倒くさいシンセだったので、ヤマハはこの点の不評を解消すべく、プリセット・トーンのROMを販売する事にし(生福シリーズ等)、これが大ヒット。以後の楽器メーカーは、製品(ハード・ウェア)を作って売るだけではなく、その製品を「どのように使うのか」の提示・提案を、ソフト・ウェアの供給を通じて行う事が必須とされるようになります。ですから

ヘビメタで使えよ!

と正面切って宣言してるHM-2 Heavy Metalとは、実はそういう時代の流れを良く捉えていたのであり、それ故の大ヒットだったのである(んじゃないかと思います)。

ちなみに、ローランドがデジタル・シンセD-50を発売するのは87年になってからですが(完全に出遅れ)、その後DTMという新たな需要を率先して開拓したローランドは、これをもって対ヤマハ戦における猛反撃を開始いたしました。

思えばボスにはこういう名作もあり、つまり「使い方を提示(というか啓蒙)しつつ販売を進める」という発想とは、もともと馴染みが良かったのかも知れません。

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この製品をちょっと使ってみて、私が気付いた「音作りのコツ」みたいな事を書いておきます(そんなの、誰も興味ないとは思いますが)。

まず、古ボスには付き物の「アダプターが合う合わない問題」がHM-2にもあります。現行アダプターPSA-100で使用した場合にLEDが暗かったら、それは旧アダプターACA-100に対応してる個体です。電源が不適切な場合の音は、この製品本来のものではありません(なんというか、汚い歪みみたいな音になってしまいます)。その場合は電池で使うのが一番無難と思います。

各ツマミの設定ですが、HM-2は景気よくじゃんじゃん歪ませてなんぼのものですから、どのツマミも思いっ切り↑↑にしてあげたら良いと思うのですが(ストラトなら"DIST."ツマミ3時以上推奨。それ以下だとサスティンが付きません)、ただし、COLOR MIX"L/H"の2つのツマミを同じ位置にしないのがポイントかも。つまり

両方のツマミを、だいたい3時以上の位置で同じ設定にすると、2つのEQが干渉し合うからなのか、中域に変なクセが付くように思えるのです。

・"L"フルテン/"H"3〜4時で、低音リフ向き
・"L"1〜2時/"H"4時ぐらいでリード用

みたいな設定で、これで低域なり高域なりが不足していると感じたら、それは「アンプで補う」という使い方を推奨。
しかしやっぱり、こういう配慮が不要なメタゾネのEQって良く出来てるよね。


2008/07/27





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