Guyatone PS-012 8 BAND GRAPHIC EQ
発売期間:1983年からの数年間(だと思う)

PS-"01X"シリーズの中古は故障品が多いのが痛い。グヤがコンパクト化した最初のシリーズである"10X"(これとかこれ)も「不調品かどうかイマイチ判然としない」状態のものが多いグヤ製品ですが、"01X"の場合は完全に壊れちゃってる事例が多数。グヤのPSシリーズ(とYAMAHA 01)の中古を買う場合は、とくにヤフオク等で「動作未確認、NC/NR」みたいな出品には手を出さないのは当然として、売り手が「動作確認してます、故障してません」と謳っている場合でも「怪しいもんだ」と思っといた方が賢明のようで。

ただ、グヤのフェイザーで一番良いのはPS-019だと思うし、ちょっとだけそそられちゃう複合型・珍味系な製品も多いのが"01X"シリーズ。しかも僕は83年以降のカタログ等を持ってないのでラインナップの全貌が不明という事もあり、出来るだけこの"01X"シリーズは買っておきたいのですが、上記のような理由で入手する機会が少ないのがちょっと残念。



グヤのコンパクト・タイプのグライコ、初代はPS-105で、PS-"00X"シリーズにはラインナップされず。そしてコンパクトのグライコの2代目としてリリースされたのが、このPS-012。

ギター用コンパクトのグライコは7バンドのものが多いと思うのですが、このPS-012は8バンドあります。

コンパクト型グライコの開発史(の極めて大雑把なまとめ)

6バンド、マスター・レベル無し、ON/OFFスイッチ無し
という仕様(MXR青箱←これの完コピ品がグヤPS-105)からスタートし、
7バンド、マスター・レベル有り、ON/OFFスイッチ有り
という大定番(BOSS GE-7)で完成形に到る。


その8バンドあるFQは63〜8kHzで、BOSS GE-7の100〜6.4kHzを上下とも半オクターブほど拡げたかっこう。

□63Hzは、低域が「ダブつくのがイヤだからカットしたいが、痩せるのもイヤだ」というような場合にちょっと便利(かも知れない)
□8kHzはノイズ対策などに有効(かも知れない)

発売当時のカタログではギターはもとより、キーボード、ベースにも最適な8バンド型 という事になっております……

なんですが、「ベース用に」はまぁ良いとして、キーボーディストがこれ使うかね?フェーダーの数が多くて、8kHzまで扱えて、カタログ・スペック的には華麗だが、結局これは蛇足機能にすぎない悪寒。

ボスのケースの大きさだと、フェーダーを並べられる数は7バンド+マスターの都合8本が限界。ボスよりも寸法的に余裕のあるグヤはもう1本フェーダーを追加して、

ボスに、勝った!……みたいな。

要するに、グヤの8バンド仕様グライコとはメーカー同士のスペック競争の産物に過ぎなかったのではなかろうか、という疑惑がございます。

ボスも相当くやしかったらしく、とっくの昔に時代遅れになっているドカベン型をいつまでもラインナップし続けるという意地の張り合いが、実は秘かに闘い続けられていたと思えなくもなく。


この製品のもう一つの特徴はマスター・レベルのフェーダーの動作で、これはブースト方向には作動しません。コントロール・パネルをよっく見てみると、帯域別フェーダーには
"+12 ←→ -12"
と表示されているのに対し、マスター・レベルは
"MAX → MIN"
となっています。"MAX"位置がIN/OUTのゲイン1:1。"MIN"位置では無音になります。要するにこれは、パッシブのボリュームにすぎない……8バンド分のアンプを組み込んだ時点で、グヤさんは力尽きてしまったようです。


だかどうだかは分かりませんが、予算の都合とか売価との兼ね合いとかでマスター用のアンプを組み込む事が出来なかったとか、あるいは「マスター・レベルでゲインアップ?いらねーだろうよ、そんなもの」というグヤさん独自の判断があったとか、その詳細は今となっては知る由もないですが(というか今更どーでもいいんですが)、バンド数を一つ増やしてボスに差を付けたまでは良かったが、マスター・レベルがただのパッシブのボリュームにすぎないというのは、これまさに

画竜点晴を欠くの喩え

と非難されても致し方なさそうな。少なくともこれの発売当時に「ボスから乗り換え」で買った人にしてみれば、「8バンドの豪華仕様で良いかと思ったら、マスター・レベルがただのパッシブ……

あーちきしょう、騙しやがって!

と、大変な不評を買った可能性あり。

ちなみ「がりょうてんせい」がでは誤字なんだが、マッキンは正しい「せい」の字を持ってなくって


ただ「マスター・レベルがパッシブ」というのも悪い事ばかりじゃなくって、もちろんグライコをブースター的に使うような用向きの人にとっては、ほぼ間違いなくNGな仕様ですが、ほんとにごく補正程度に使うとか、あるいはバッキング時の音色用(レスポールでストラトのハーフトーンの音を作る等)として用いる場合なら、これはこれで便利かも(と思えなくもない)。

グライコで音を作る時って皆さんはどういう手順で行いますか?僕は最初に足したいバンドをブーストいたします。

というのはギターの場合の話でして、ベースの場合はまずローをカットするところから始めますけれど

それで「ブースト主体→無駄なところをカット」という手順で音を作っていくと、たいてい作業の終わる頃には全体的な音量は上がっているものです。リード用の音色ならそのままでもOKですが、バッキング用で音量控えめにしたい場合は、最後の仕上げにマスター・レベルで音量を下げ方向に微調整。その場合、ゲイン・アップ or ダウン式のマスターだとフェーダー長20mm(これはボスも同様)の半分の長さ(10mm)の範囲内でしか音量調整が出来ないが、パッシブ(=下げ方向しかない)のマスターだと20mm全ての長さを使って微調整を行う事が出来る。これはかなり便利です。

まぁ僕が本気でそう思っているかどうかは、これ既に売却済みという事実から明らかで

以上はグライコをプリセット・ボリューム/プリセット・トーンとして用いる場合の話でして、今どきそんな事する人はいないと言われてしまえば、実にそれはその通り。


先代PS-105はゲインの可変幅が18dBだったのですが、このPS-012は12dBという控えめ(ほどほど)な数値に抑えられているのも、リード用ブースト用の極端にゲインアップ設定した使い方ではなく、あくまでも音色を補正するための道具として考えられていたのかとも。マスター用のアンプも、無しで済むならその方が音質的にはより良い(んじゃないかな)ですから、マスター・レベルがパッシブだというグヤのグライコ、これはこれでありかなと思います。


2006/12/01





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