KORG FK-2 Mr. Multi

1972年発売:当時定価¥15,000

1963年にドンカマチックを発売し、以後専らリズムマシンの製造を行っていた(のかな?)コルグが、1970年以降鍵盤楽器の製造を開始する、その最初期に発売されたエフェクター。

同時期には他に
Traveller F1(Univibeの開発者・三枝文夫氏の設計になる製品で、ユニバイブにリング・モジュレーターを合体させたようなもの?)
V-C-F(シンセのVCF部分を単体化し、床置き・ペダル・コントロールが可能な製品。ワウ系)
の都合3種類がラインナップ。

このFK-2 Mr. Multiはペダル・ワウ、フェイザー、オート・ワウ(モデュレーション・ワウ)の切り替えが出来る多機能型ワウ。製品名がミスター・マルチというだけあってミニ・マルチ的な内容のエフェクターで、ボディ左側に

Switch A PHASE/WAH/DOUBLE WAH
Switch B AUTO/PEDAL

の2つの切り替えSwitchがあり、合計6通り(3×2)の機能選択が出来ます。

なんですけれど実際には、大きく分けて

ペダル・ワウ系
Switch A WAH / Switch B PEDAL
Switch A DOUBLE WAH / Switch B PEDAL
Switch A PHASE / Switch B PEDAL

とモデュレーション系
Switch A PHASE / Switch B AUTO
Switch A WAH / Switch B AUTO
Switch A DOUBLE WAH / Switch B AUTO

の2通りの機能しかないので、マルチ的に多彩な効果が得られるというものでもないです。

Switch Bが"PEDAL"モードの時に普通のペダル・ワウ、Switch Bが"AUTO"モードの時にはフェイザーとモデュレーション・ワウのレイトをペダルで操作出来るようになります。

音色の方は、"DOUBLE WAH"モードの時にはわりと深めのワウになりますが、それ以外は全体にあっさりした掛かり方。

A PHASE / B PEDALの組合せの時の音色は、効果としては普通のペダル・ワウとほぼ同じなのですが、低域があまり削られず、むしろちょっと音が太くなる感じ(ブーミーであるとも)で、これはわりと独特の音かも知れません。

エフェクトOFF時の音ヤセは少ない方です。
ACアダプターには対応しておらず、電源は9V電池1個。

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ところでTraveller F1は「鍵盤楽器用」のエフェクターなんだそうで、という事はこのMr. Multiも、もしかしたら鍵盤楽器用というか、つまり入力の受けがローインピーダンス対応だったのかも知れません……というのは今この記事を書くためにネットをググって知ったのでして、入手した時点ではそれ知りませんでしたから、僕はこれにエレキを直接つなぎ、結果「効果の浅いワウ」という印象で売却へ。

(記憶の中にある音をまさぐってみると)効果が浅いというよりも「ハイ落ちした・大人しい音」で、インピーダンスのミスマッチを起こした際に典型的な音質だったかも……というような気もしてくる。

これにエレキを直接つなげるのが使用法の誤りだったとしたら、そしてそれで本来のサウンドで鳴らせないまま売却しちゃったのだとしたら「もったいない事したなー」なんですが、鍵盤用となれば、やはり(自分にとっての)実用性は低いという理由で売却したであろう事に違いもなさそうな。

「実用性」という事で言うともう1点、この製品はペダルとしての耐久性が低そうで、見た感じは"CRY BABY"等と同様で材質も金属ですが、"CRY BABY"のようにずっしりと重いものではなく、ちょっと華奢な作りのような、ペダル可動部分の支点の強度も頼りないような。つまり常用機材として常に踏んでいるのはちょっと不安かな。

多機能エフェクトですから内部はかなり窮屈なのですが、それがボール紙1枚で保護されているだけという成り行き感漂う作りもナンダカナーでして。

この製品はわりと珍品の方で、コルグ製シンセのごく初期の物にしか採用されていない火の玉ノブが使われている見た目からも、日本製原始時代エフェクターならではのエグくてドロドロなサウンドをつい期待してしまい(またそういう期待があった分だけ)、「なんか普通、とってもまとも」で、かえってガッカリな印象になってしまったかも。

もちろん「普通でまとも」でいけない理由なんてないんですが。

まあ使用法の誤りで効果薄という疑惑があるものの、考えてみればコルグとはヤマハ製エフェクターの「中の人」を永年勤めた会社ですから、そうそうガレージーで破天荒な製品を作るのでもないのかも。
なお、ヤマハは60年代末頃からエレクトーンのオプションとしてコルグのリズム・ボックスを採用していたんだそうで、コルグとヤマハって、思った以上に深い仲なんですなぁ。

あるいは、ヤマハ的にはNikkanを吸収したようにコルグもそうしたかったのだが、コルグの方でそれに抗ったとか。
現在はどうか分かりませんが、コルグがヤマハの100%子会社だった時期はございます。ヤマハ・ブランドの製品はカワイ系列の楽器店では販売出来ないという事情もあるらしく、完全に吸収してしまうのではなくコルグ・ブランドを残す。これ即ちヤマハの分身の術か?

ペダル天板にゴムが貼られていないのもどうかと思うんですが、これは案外日本製フット・ペダルの標準仕様なのかも。

2006/12/15
(改)2008/03/28





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