PEARL TH-20 THRILLER

発売期間:パールのエフェクターは1981年(?)から数年間。この"THRILLER"は1984年(M.ジャクソンの『スリラー』がヒットした年)かもね

現在は打楽器専門になってしまったパールも、以前はエレキその他を手広く扱っており、1980年代の初期にはエフェクターも扱っておりました。

生産期間短い/ラインナップ少ない/大手に比べ明らかに弱小勢力

であるわりには中古でよく見かけるので、当時はそれなりの支持を得ていたと思われ、(中古品としてもとくにレアという事はなく、ヤフオク上にも定期的に出現いたします)1981年時点での新品定価が、

オーバー・ドライブ(OD-05) ¥9,800
フェイザー(PH-03) ¥12,000
コーラス(CH-02) ¥14,500

ですからべつに安売り路線ではなく、むしろ高額な方で、これ以外にも大型ケースのディレイ/フェイザー/コーラス、定価が2.4〜3.4万円というシリーズもあって、どちらかというと高級品のイメージでそれなりの販売成績を収めていたようです。

カタログの宣伝文には「従来の製品には**という欠点があったが、それを改良」という謳い文句が多く、それは具体的にはノイズ対策重視だったり、パラメータが多かったり(全ての製品が4ノブ以上)、オーバー・ドライブにパライコを組み合わせてみたりetc.という事で、全体的に回路も大きい。ボスやマクソンに比べてケースがやや大きいのもパールの特徴ですが、これも多機能を実現するための基板の面積を稼ぐためか?以上をまとめると、

○後発ならではの有利さを製品仕様に盛り込む事
○従来製品に不満を抱いているユーザーの要求に応える事
○以上の2点を充たす事で、多少販売価格が高くなっても一定の支持を集め得るであろう

という見通しに立って、パールの製品戦略は展開されていた(という私の推測。ぜんぜん間違ってるかも知れませんが)。

1981年時点での4ノブ・エフェクター@日本製品というと、ボスでいうならBF-2 フランジャーしかなかったので、そう考えるとパールの4ノブというのも、当時としてはなかなか魅力的な商品だったかも知れませんね。
この時期に「ノイズを嫌い、多機能エフェクツの設定いじりに萌え、多少高価でもOK」な嗜好のギター弾きとなると、これはジャンル的に言えばフュージョンって事になりますか。そういう需要を見越していた訳でもないのでしょうが、パールのエフェクターに対しては全体的に「大人しい・上品な音」という評が多いとおもいます。80年代風ハイファイ指向のはしりかとも。

ツマミ形状の印象から、見た目が「可愛い」というような評もあるようです。


さてこのスリラー、僕は残念ながらこれの発売時の宣材等の資料を持っていなく、発売年が不明。マイケル・ジャクソンの「スリラー」がヒットしたのが1984年ですから、もしかしたらそれに掛けてあるかどうか?といったところです。型番が"20"でもありますし、少なくともパールのラインナップ中、後期のものであるのは間違いのないところ。

家の中のどっかにこれの広告が載っている古本があったような気が……あるいは最近ネット上でこれの広告の画像を見たんだっけか、とにかくこれの広告は、おどろおどろしい手書き風書体で"THRILLER"、それでスリルがどーとかこーとか謳っている内容だったはず。そのうち発掘できたら追加UPします。

種目的には、とりあえずこれはエンハンサーあるいはエキサイターなのですが、そして効果浅めの設定ならば、ごく普通のエンハンサーとして使えるものなのですが、このスリラーは普通のエンハンサーでは考えられないほど、言い換えれば

不必要なほど

効果を強く出来るのが特徴。"BALANCE"ツマミでダイレクト音とエフェクト音のバランスを取れるので、(極端な設定をすれば)フィルターを通過したエフェクト音のみにする事も可能なのが、機能面での最大の特徴。

それでまぁ、エキサイターを思いっ切りキツく掛けた音がスリルーかどーか?はこれを受け止める人次第とでも言いますか……個人的にはコレ、

不愉快きわまりない音

なのでして。喩えて言うなら「ガラスを引っ掻く音」とかそういう類ですかねぇ。フェイザーやフランジャーと組み合わせると更なる気色の悪さが味わえます。

普通にエキサイターとして使うなら、パラメータが4つもあるので、もしかしたらかなり使いやすい製品なのかも知れませんが、エキサイターという種目自体がもはや絶滅種。クラブDJやテクノ方面で、リズム・マシンやサンプラーに通してリアル・タイムにツマミぐりぐりとかいう使い方なら、案外いいかもです。

なお各ツマミの機能について、"COLOR"というのはたぶんフィルターのQの鋭さかレゾナンスの調整用、"MULTIPEAK"というのは、これを動かしてもどこがどう変化しているのかよく分からない謎ツマミでした。


以上、先にも書いたように大人しくって上品で、品行方正で優良品な印象のパールだったんですが、何だってこんな変な音のエフェクターを作ってしまったのか?そこそこ売れていたとは言え、経営的にはたぶん全然ダメだったと思われるパール製エフェクターですから、これつまり売れ行き不振に業を煮やした開発陣が、苦しまぎれで放った、

ブランド断末魔のさいごっぺ

みたいなものかと。

2006/12/14
(改)2008/03/28





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