Tokai TOD-1 OVERDRIVE

ジャパン・ビンテージっていう言葉も、年を経るたびアレ度が増し、

現在、ギター用語としての「ビンテージ」は、単なる「中古品」とほぼ同じ意味になりつつありますなあ。かつてこの言葉に含まれていた付加価値は、そこまで低下してしまったと思われ。

「ビンテージ」に限らずこういうキャッチ・フレーズの類は、世間に十分浸透し、誰もがよく知ってる言葉となる頃には既に陳腐化が始まってるものですが、2008年現在、「ビンテージの陳腐化」はどこまで進行したかというと、

缶コーヒーかよ!

ビンテージ(ヴィンテージ、vintage)というのは、元々はワインの世界の言葉。ワインの原料であるブドウは、その品質(作柄)が収穫年によって大きく異なるという性質があるため、同じ銘柄であっても産年によって価値は大きく異なる。ビンテージという言葉に「特別な何か」を期待させるような意味合いが含まれるようになったのは、このような事情と歴史的経緯があるわけで、

vintage;
同一年に一定の区域から収穫されたぶどうのみを使って醸造されるワイン、また、そのワインに使われたぶどうの収穫年を指し、いわゆる当たり年のワインを指すようになった。
転じて、名品や年代物の楽器・オーディオ製品・カメラ・衣料品・自動車などの希少品の意味に用いられるようになった。

「ヴィンテージ・ワイン」といえば、高級ワインの代名詞であることから、英語圏には、「ヴィンテージ」のつく商標や商品が多数ある。

派生語;
名品・一級品を示す用語。ジーンズなどの古着やヴァイオリンをはじめとする楽器に用いられるようになり一般化した。現在ではその使用範囲はきわめて広く、家具や日本酒などにもヴィンテージと呼ばれるものが存在する。基本的に過去の年代(およそ10年以上前)に作られた製品に対して使われ、新しい製品(10年以内)に使うのは誤りである以上うきぺ

ビンテージという言葉がいくら一般化したからといって、いくらなんでも缶コーヒーがビンテージって、少しばか過ぎじゃなかろ

しかし私は、和製英語の愛好家であり推進派なのであります。

まあ「ビンテージ」の場合は和製英語というより和英語なですけど、ある言葉の成り立ちや、文化や歴史性を軽く無視して、なんか良さそうと思ったものをノリと気分だけで使い倒していくという意味では、「ビンテージ」だって立派な和製英語です。そしてこの和製英語とは、実にユニークな日本独自の文化であり、私はこれを愛します。ですから、和製英語化した「ビンテージ」が日本中でじゃんじゃん使われてる現状はすばらしい

とも思わないですけどべつに。しかし現在の日本で用いられてるビンテージとは和製英語なのであり、流行語なのでもありますから、もう缶コーヒーだろうが即席麺だろうが、何でもビンテージ呼ばわりでいいと思います。どうせ間もなく飽きられるんだろうし。というか、こういうのは使われれば使われるほど飽きられるのも早まるものですから、もうしばらく我慢すれば、ギター売り場での「ビンテージです」っていうばか宣伝を見なくて済むようになるのではないかと期待する昨今。

ジャパン・ビンテージ=「日本製ギターを再評価するためのキャッチ・フレーズ」だったのだと考えると、これはそれなりに良いものだったとは思います。この言葉が登場した時に流行ってた「日本の物づくり再評価」とか昭和マンセーとも相性が良かった(NHKの番組『プロジェクトX』が追い風)。しかしこのキャッチ・フレーズの基本的な性格は過去礼賛的なものであり、またコピー・モデルとの結びつきが強すぎる。そして、流行語化したビンテージは完全にアレ化してる。となると、ジャパン・ビンテージに替わる何か新しいキャッチ・フレーズがもうそろそろ必要かも知れませんね。そうでないと、ジャパン・ビンテージであると見なされる事でその取引価格がプチ・バブル的に膨張してるあれやこれやの全てが、

☆どんなに出来が良くても、コピーはしょせんコピー
☆コピーが本家を超えるなんて事は、絶対にない
☆日本製は、ダサい

という考え方が常識だった時代のお値段にまで再び下落する可能性がありまっせ。私個人的には、そうなってくれた方が嬉しいんですが。

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され、ここから先は今から約2年前(2006年頃)の話しになります。というかこのページの本題の、トーカイのエフェクターについての話しです。前置きが長くてすみません。私がこのエフェクターをヤフオクで売却したのが2006年頃だったのですね。

2006年頃というと、ジャパン・ビンテージ信者もまだまだ元気びんびんだったようで(もっとも信者が元気だったのか、それとも信者を釣ろうとする輩の方が元気だったのかは判然とはしませんが)、トーカイ製品に対する評価は非常に高く、というか妄言の度合が完全にアレアレでした。トーカイ製の、ギター本体に対するそういう駄言ならまあ毎度の事として見過ごす私ですが、トーカイ製のエフェクターを、

名作!

と評し、それでべらぼうな売値を付けてるのを見つけた時には、さすがにこれは看過ならんと思いまして、どうもここらで一度、増長するジャパビン信者共を「〆」ておく必要がありそうだなと。幸い手元には、売り捨ててかまわないトーカイ製エフェクターが2点ほどあったので、以下の説明文を添えヤフオクに出品いたしました。

Tokai TOD-1 OVERDRIVE
今から約25年前、「完全コピー」と呼ぶにはあまりにも半端な仕上がりのフェンギブ・コピーを大量生産したヘタレ・ビンテージの雄、東海楽器ブランドのエフェクターです。しょせん模造品を子供相手に売り捨てるぐらいが関の山だった会社が、ちょっと片手間にやっつけたエフェクターですから、こんなもの音が良いわけがありません。非常に安っぽい歪みです。

ただ「昔風の歪み」である事と、"TONE"の可変範囲がかなり広いので(というか音質変化しすぎ)、使う人によってはこれが良いと思える万が一の可能性なきにしもあらず。どうか「ダメもと」で諦められる価格の範囲でご入札下さい……

スタート価格は¥100。とにかく、極力けなすという意図の作文なわけですが、後半は「売り手」としての下心がちょっと出てしまったのがヘタレだったかな俺。しかしオークションが終了したら落札者さんと個人情報および金品のやり取りをする事になるわけですから、あまりにも過激な事は書けないですよ。それで結果の方は

¥7,000也

だったんですけど、これを例えばボス製品と比較してみるなら

☆OD-1の銀ネジが¥15,000-超
☆OD-1の最終バージョン(人気薄)が¥10,000-前後
☆日本製SD-1が、良くて¥7,000-
☆台湾製SD-1なら、平均して¥5,000-以下

というのが2006年頃の相場でしたから(当社調べ)、トーカイのODはよくがんばったものであると申せましょう。もちろん私的には、これは過剰評価なのであります。「いたずら入札」で値が上がったのかもと思いましたが、終了後のやり取りも普通にスムーズで、というか相手様は実に紳士的な方でした。トーカイ製品のファンなのか、それとも珍品エフェクター専門のコレクターなのかとか、そういう事は分かりませんけど、もしもトーカイ・ファンだったなら、なんかいぢわるみたいな事を書いたのは悪かったかなという気もちょっと。しかしこういう売り方をした事で、少なくとも回転家の付けてるぼったくり価格よりはずっとお安くゲト出来たという点も考慮して頂き、こんな口の悪い私をどうかお許し下さいませ。2年後に謝ったって遅すぎますけど。

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しかしこの出品を通じて分かったのは、誰か一人が「こんなのゴミだ!」と叫んだくらいでは、市場に出来上がってる評価額というか相場価格的なものは、それほど大きな影響は受けないのだという事。逆に言うと、誰か一人がある製品を、思いっ切りマンセーしたとしても、それで大きく値段が上がるという事も無いのでしょう、きっと。


ON/OFFスイッチのプレートが電池ボックスのフタを兼ねてるのはボスと同じですが、完全にガバっと開くので電池交換がやりやすいのが、この製品のボスより優れてる唯一の点。ケースの材質は、たぶん合成樹脂。

ケースの形状全体としては、接地面積がやや狭いので安定性が悪いです。ボードに貼り付けてしまえば関係ないのではありますが、これ単体で床に置くのはちょっとやだな。踏みつけながら横に倒してしまった場合、ジャックを痛めてしまいそう(床面とジャックの距離が、他所製品と比べて大きいのです)。
後発メーカーなのにこういう点がアレなのは、ほんと製品としてのレベルが低いなと感じるわけです。開発段階で試奏とかモニタリングとかすれば、当然指摘され改善されるであろう初歩的なアレで、だからトーカイのエフェクターってのは見よう見まねのやっつけ仕事なんだと思われ。


2008/09/15





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