RCA BK-5B

 RCA BK-5Bは単一指向性のリボン・マイク。基本、リボン・マイクとは双指向(8の字)なものらしいんだけど、BK-5シリーズは単一指向性。1960年に発売された製品(だと思う。5Bの前身モデルである5Aが発売されたのは1957年)。
 TV放送によく用いられたそうで、国内外ともに現存数はけっこう多い方だと思います。ホルダーの取り付け角度が、ブーム用としてちょうど良い(らしい)。

 ちなみに、RCA 77DXの生産終了は1973年で、RCA社のマクロフォン部門が廃止されたのは1976年。

 長さ約18cm/最大直径約4.5cm/重さ約1.2kg(一体型のホルダーやコネクタを含む)。デカい/重い/壊れやすいの三重苦を備えた骨董品。ゲインが低く、大音圧や風圧に弱い。ろくなしろものではありませんが、デジタル・レコーディングが一般化した21世紀になって再評価され始めたリボン・マイクです。

 私がこれを入手したのはヤフオクを利用し始めて間もない頃だったから、2005年頃だったはず(よく憶えてません)。3万円くらいで購入(これも曖昧)。当時、新品で入手出来るリボン・マイクといえばAEA社製のRCA 44BXの復刻版くらいしかなく、定価は30数万円。その1/10の値段でビンテージものが入手出来るんだから、ヤフオクってすげえ☆と思ったわけですよ。最近はリボン・マイクの新製品が何種類もあって、数年前と比べ格段に買いやすくなってると思います。

 写真で被写体の大きさを説明するためには比較対象を一緒に写し込む必要がある。ということで、BK-5B専用のフードと9V電池を並べてみました。どんだけ大きいかという。レコーディング・スタジオでこれ出されたら少しビビるんじゃないかと思うくらいの大きさ。


 BK-5Bの「顔」は、イカつくてコワい感じがいたします。「頑丈さ」を優先して、こういう作りになってるのかな?


 付属のコネクタはなぜかメス。

 リボン・マイク=音が柔らかいものという定説がありますけど、リボン・マイクの製品は無数にあり、実際は柔らかいものから硬いものまで色々らしいです。RCA 44BXは柔らかい方のリボン・マイクの代表機種で、BK-5Bは「やや硬め」な方とされてます。とはいえ、概ねどのリボン・マイクも5〜10kHzの間が大きく抜け落ちるものですから、コンデンサ・マイク等と比べれば柔らかいには違いない。柔らかいというより、不自然にエンハンスされた感じがなく、無駄に過敏でなく、「素直な音」だという事ですね。それととにかく低ゲインなので、マイク・プリ・アンプによって音の変わる度合も大きいと思う。
 過度特性が悪いので、勝手にピーク・リミッティングしてくれる効果もあるとされる。アクセントが強調されないので、それが「柔らかい」という印象を生むのだとも考えられます。この点は、ソースや音楽ジャンルによって合う・合わないが分かれるところでしょう。
 歯擦音を拾いにくいので日本語の収音には向いてるが、歯擦音を多用する言語には不向きかも。ブレス・ノイズも拾いにくい。風圧に弱いですから、ブレスが直撃しない位置にセットするのが基本。
 長時間の連続使用も不適かも。ボーカルの録音で、それが長時間に及ぶ事が予想される場合は、マイクを口よりも高い位置にセットするべきかも知れません。

 骨董品なだけに使いづらい点は多々ありますけど、自分の持ってるマイクの中で一番好きなのはこれです。

2010/10/24


 上記ではデカいという事を盛んに強調してますけど、後日よく考えてみたら、寸法的にはコンデンサ・マイクと大差ないです。ただ重さは、たしかに重い。中に大きなマグネットが入っていて、それが重たいらしい。

改)2012/06/15


2013年12月14日追記;

 2011年初頭頃の音UPブログの記事に、このマイクは中低音域に一定以上の入力があるとバズが発生すると書いてたのですが、その後間もなく、
・マイクの上下を逆さにセッティングし、
・付属のホルダーではなくショックマウント等を用いると、
この不具合は解消する事が判明しました、というのを追記するのを忘れてました。BK-5Bはそれほど頻繁に使うマイクではないので上記の対処法で本当に問題ないかを確認するのに数ヶ月を要した、という事もあっての追記忘れ。現状は一応、問題なく使えております。

 それと、BK-5Bの重量を量ってみました。付属のホルダー込みで約1.2kgです。コンデンサ・マイクの重量はどのくらいかというと、
・NEUMANN U87Ai=500g
・RODE K2(真空管コンデンサ)=680g
SOUNDKING SKEC011=460g
Oktava MK-319=415g
なので、数値だけ見るとBK-5Bの1.2kgはとくべつ重くもなさそげですが、実際は、マイクの1kg越はかなり重いです。ホルダーやスタンドは500g以内を想定して設計してるのだろうし。だから現状、バズ問題の絡みで専用ホルダーは用いてませんけど、そうすると色々面倒なわけです。出来れば専用ホルダーで使いたい。
 なお、MXL R144は400gで、コンデンサ・マイクと比べても軽めな方。なんでそれほど軽いのかと思いますけど、R144はトランス・レスではないし、となると、
・マグネットが小さい
・ケースが薄い
等々の理由が考えられます。軽い方が便利なのではありますけど、Oktava MK-319も軽いマイクで、これの音がフカフカしてるのは、本体重量も関係あるのかな?マイクはダイアフラムや回路だけでなく、ケースも含めた製品全体の形状と質量と剛性で「音を作ってる」ような面もあるらしいから、つまり軽いマイクは軽いなりの音なのかな。AKG C414は300g。まあ色々ですね。

改)2013/12/14

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