RolandのPCMシンセでBeethovenの弦楽四重奏 No.6、
90年代末頃

2012/03/23
(改)2017/09/25


 1990年代の終わり頃、私はクラシック曲のMIDIデータをいくつか作りました。ベートーヴェンはAKAI CD3000XL用に作ったピアノ・ソナタと、このページの弦楽四重奏曲の2曲。ピアノ・ソナタよりも更に不出来なのだけど、折角だから公開します。
 Audio CDに焼いて保存してたのだけど、盤面が劣化したせいで所々にノイズが入ってます。打ち込み間違いも数カ所あります。

音源は、Roland M-SE1 String Ensembleっていうマイナー機種と、ヒット商品・JV-1080の2台。両方とも10年くらい前に売却して、今は所有してません。

 弦楽四重奏の4パートを、この2台の音源にどう振り分けたかの記録は残ってないのだけど、
・1st ViolinはM-SE1 。これは間違いない。
・CelloはJV-1080。これもたぶん間違いない。
・2nd ViolinはJVで、ViolaはM-SE1、だと思う。

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  Roland JVシリーズにはエクスパンション・ボードという、パッチを追加するためのROMカードがあって↓

 これらのROMボードを、音源モジュールとして単体化したEXPANSIONシリーズという製品群があった(全部で5機種くらい)。その中の一つがM-SE1 String Ensemble。バイオリン族専用の音源です。
 EXPANSIONシリーズは、PCMシンセとしての機能はJVよりも少ないが、その分、操作が単純。またJVよりも音が硬めなような気がする。ライブ向けの機材だったように思われます。
 しかしEXPANSIONシリーズは不人気商品だったですね。ネットでググっても情報は少ない。中でもM-SE1 String Ensembleは、一番人気なかったっぽい。でも私的には、少なくともソロ・バイオリンの音に関しては、JVよりもM-SE1の方が良いと思えたんですね。だから使ってた。

 尤も、当時はE-MUとかはまだまだ高額で、そちら方面を試した事はなかった。アカイのサンプラーは持ってたけど、アカイのライブラリCDのバイオリンは全然ダメで、他社製のサンプリングCDも、当時はまだネット上の通販サイトでデモを試聴したりは出来なかった。そのくせすごく高額だから、手を出しにくい。それに、私の打ち込み歴はRoland SC-55から始まってJVシリーズに移行というお約束パターンだったので、とりあえずローランドのを買っとけば安心という感覚もあった。そんなこんなで、このM-SE1が自分的には丁度良い製品だったのです。

 でも、アカイのサンプラーを入手する前にM-SE1を買ってたのかも。既にサンプラーを持ってたら、M-SE1は買わなかったかも?そこら辺の記憶は、もう完全に曖昧です。


このデータ演奏の音がバイオリンらしくない、という点について

 C/P的にはけして悪くはないM-SE1だけど、やはり、とても良い音という程のものではない。しかしバイオリン「らしさ」に欠けるのは、データを作る側の問題でもあります。

 このMIDIデータを作った当時の自分は、バイオリンを弾いた事がなかった。その後、何年間か弾いていた時期があって、今はもう止めちゃいましたけど、やはり少しでも触った事があるのと無いのとでは、データの出来はぜんぜん違ってきますわね。ちなみにピアノは、まるで弾けません。だから私の作るピアノ曲のデータには色々おかしな点があるんだと思う。実際、ピアニストからおかしいと指摘された事がある。その同じ人から、ギターの打ち込みは上手いと言われた。
 つまり、ギターを弾けるならギターの打ち込みも上手く作れる。しかしDAWが使いやすくなった現在では、ギターの音が必要なら打ち込むよりも自分で弾いて録音してしまえばいい。打ち込む必要があるのは、自分では弾けない楽器である。しかし自分が弾けない楽器を打ち込むと色々おかしなものしか作れない。しかも、どこがおかしいのかを自分で気付けない。という根本的に残念な問題がございます。

 ギターやピアノの場合の「らしく」するポイントは、ベロシティとレングスと発音タイミング。この3つだけと言ってもいいくらいだ。しかしバイオリンや管楽器では上記3要素の他に、
・エクスプレッション
・フィルター
・ピッチ・ベンド
を用いる必要がある。作業の手間も、ピアノよりはるかに大変です。

 しかし私のこの、10年前に作ったMIDIデータでは、フィルターとベンドは操作してません。エクスプレッションを書き込むだけで手一杯なのでもあったし、当時はフィルタやベンドを操作する必要性をあまり感じなかった。という点こそが、実際の演奏経験の有無の違いで、今の自分なら絶対にフィルタもベンドも操作します。しかしそうなると、作業はますます面倒になる。

 もしも今、改めて弦楽四重奏曲のデータを作れば10年前よりかはずっとマシなものを作れると思う。たぶんそれは間違いない。しかし今の自分には、そういう作業をする時間的等の余裕がない。ずっとマシにするための手間の増大を思えば、ますます無理です。ベートーヴェンの、もっと後期の弦楽四重奏曲とか、あるいはモーツァルトの、あるいはラベルの弦楽四重奏曲を打ち込みで作れたら面白いに違いないのだけど、労力を考えたらそれは無理。これはちょっと口惜しい。

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 とは言うものの実は、MIDIデータを生演奏「らしく」作るという事に関して自分はもう,あまり関心がないのです。その理由は、

その1;
 先にも書いたように、90年代のDAWは生演奏の録音をしづらかった。でも今は違う。だったら弾けない楽器の下手な打ち込みに時間を掛けるより、弾ける楽器で出来る範囲の事に注力した方が良い。

その2;
 私がベートーヴェンの曲を打ち込んでみた理由は「ソナタ形式とは何か」を知るためでもありました。つまりこれは学習のための題材。その目的のためにMIDIデータを作るってのは遠回りのようだけど、90年代の頃は生演奏っぽいMIDIデータを作るのも有意義な事と思われてたので、一石二鳥的な作業として弦楽四重奏曲を作ってみたのでした。

 学習のためのデータなら生演奏っぽい必要は無いかもだけど、強弱やテンポが変化しない「棒読み」みたいなデータでは役に立ってくれない。例えていうなら、ニュースの原稿を読み上げるアナウンサー。
 この場合のニュースってのは、何十分も掛けてキャスターやレポーターが尾ひれ背びれを付けた無駄情報を垂れ流す高齢DQNのための猿芝居の、つまりいわゆるニュース・ショーではなく、5分とか10分の隙間時間に原稿を読み上げるだけの、地味でシンプルな方のニュース。
 これを例えば、調声が全くされてないボカロで、つまり低品質の機械音声で原稿読みしたら、とても聞き取りづらく理解しにくいものになってしまう。譜面をMIDIデータにして鳴らすのも同じで、最低限の抑揚や息継ぎの間が無いと「意味」が伝わらない。それで、ピアノ等の鍵盤楽器なら、その最低限の何かしらをデータに与えるにはベロシティ、レングス、発音タイミングの3要素に気を付ければOKだけど、バイオリン族の場合は他にも色々する事があって大変。その手間さえ無ければ、あるいは最近の音源を使えば多少手間が省けるというなら、あるいは弦楽四重奏の譜面をバイオリン族ではない楽器(オルガンとか)に置き換えてもそこそこ聴けるものになるなら、MIDIデータによる弦楽四重奏曲に再挑戦しても良いかもですね。


スライドショーの譜面について

 バッハの曲には譜面を付けて、しかしベートーヴェンのピアノ・ソナタには付けませんでした。その理由は↓の記事に書いた通りで、
AKAI CD3000XLでベートーベンのピアノ・ソナタ
ざっくり要約すると「面倒だし無駄な気がする」という事だったけど、今回の方には付けました。その理由は、

1.
 ビオラ・パートのクレフをCではなくG/F併用にしてます。私はCクレフに不慣れなので、弦楽四重奏の譜面を見ても中声域がどう動いてるのか分かりにくい。これちょっとしたストレスで、だったらCクレフを読めるようにしとけよって話しかもだけど、今回はこうしてみました。この譜面を見ながら音を追ってみたところ、色々快適です。私的にはこれやってみて良かった。ただ、こういう特殊な譜面を自作したため、スラーとかスタッカートその他の演奏記号は全て省略です。それらを入力するのは大変すぎますので。

2.
 この弦楽四重奏の録音、自分的には駄作だから公開しない方が良いかもとも思う。それでもあえて公開するなら何かしらの「色」を付けないとつまらないかなと思って。

 結果的に、譜面を付けて良かったと思います。弦楽四重奏曲はポリフォニー音楽ではないけど、奏者4人の対話で進行するという点ではポリフォニー的。だから、ピアノ独奏のソナタも弦楽四重奏のソナタも同じソナタではあるけど、独奏曲とは全く異なる要素、展開の仕方が、弦楽四重奏にはある。という事に、今回改めて譜面を追いながらこの曲を聴いて気付きました。ビオラが読みやすくなったからでもありますけど。
 そしてまた、弦楽四重奏に対する感覚が多少変化した後にバッハのフーガを聴いてみる。総譜型の譜面を付けたフーガの技法ですけど、これも何か、以前とは少し違った感覚が生じる。というような事もあったので、今回の弦楽四重奏に譜面を付けたのはやっといて良かったなと思う。奏者4人の云々については、ピアノ等の鍵盤楽器ではなく、シンセの音でもなく、バイオリン族の演奏をシミュレートしたからこそなのかなとも思います。


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