(お別れ録音)
Teisco May QueenとH.S.Anderson A1 Huston、2011年6月

2011/07/19
(改)2017/10/07


 いわゆるビザール・ギターの第一の特徴が実用性を無視した奇抜な外観だとするなら、この2本はまさに典型的なビザールであると申せましょう。さらに、
★膝に置けないエレキ
★座って弾く事を許さないエレキ
としても名高い2本の競演。といってもべつに、わざわざ弾き辛さを競わせたいのではない。そんな事をしても実際に辛い思いをするのは私一人のみである。しかしこの2本は両方とも、
「8ビートをババババババと刻むのに最適なエレキ」
という共通点があるように思えるのですね。逆に言うと、そういう使い道しか無いエレキ。

 Teisco May Queenは、外観はVOXのエレキ・マンドリンの流用だけど、音的には和製リッケンバッカー的な性格が多少ある(ような気がする)。だからマージー・ビ−ト系に向いている(ような気がする)。

 H.S.Anderson Hustonはアナーキーの人が使ってた。だからといってべつに「パンク〜NEW WAVEな音」って事はないんだけど、ボディの体積が少ないから、弦振動がボディからのフィードバックを受けない。そのため、辛口でスピード感のある音が出る。50〜60年代のパーティー・ミュージックの類には不向きかも。

 つまり、8ビートを刻むのに向いてると言っても、楽器としての性格はかなり違う。というか8ビートにも色々あるわけで。しかし私はこの2本を組み合わせて平山三紀・真夜中のエンジェル・ベイビーのカバー・カラオケを作ってみました。ギター・ソロにはBig Jamの歪みエフェクターを掛け、ベースはTeisco Phantom-B。レア機材の豪華競演です。

■両方とも、ギター・アンプはYAMAHA YTA-25/マイクはAUDIX D1

■R Ch.=Huston
■間奏(先攻)はBig Jam SE-8 Distortionで歪ませてます。
■エフェクトの設定は、DRIVE=50% TONE=70%

■L Ch.=May Queen
■PUポジションはフロント
■間奏(後攻)はBig Jam SE-13 SPACE Driverで歪ませてます。
■エフェクトの設定は、EXPAND=100% DRIVE=75%

■ベースはTeisco Phantom-B
■PUポジションはリア
■プリアンプART DUAL MPを介して卓直
■DUAL MPの設定はInput/Outputの両方とも11時 High Z Inputを使用

■2011年6月5日/7日/10日録音

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 間奏のギター・ソロには歪みエフェクターを掛けてます。

■Big Jam SE-8 Distortion
 Big Jamのエフェクターは基本的にどれも、低域が太くて音の芯がしっかりしてる。スイッチが頼りないし壊れたら代替品が無いから、念のためVOXのディストーションも所有してるけど、どちらか一つだけ選べといわれたらBig Jamかな。

■Big Jam SE-13 SPACE Driver
 こちらは生温い歪みにコンプを組み合わせた複合機。「音の芯がしっかりしてる」のが多いBig Jam製品としてはちょっと異色。グヤ製品にもこのタイプがあります。歪み+コンプの複合機は80年代の初期に少し流行ってたのかも。しかしこのテの音は当時すでにアナクロ感があったのでは?筆者個人的には、ロック史上のある時期に特有なヘボい歪みが一発で再現出来る便利なグッズだと、そう思っております。
 しかしMay Queenとの組合せでは「なんかえもいわれぬ何かがなにしてる」というか、よくわからないけどともかく凄い音になってますな。

 May Queenにはリッケンバッカーっぽいところがある(ような気がする)。
・コード感がおかしいというか、
・レゾナンスがアンバランスというか、
・要するに「ヒドい音」というか。
しかしビートルズの録音には、こういう響きがけっこう含まれてるように感じられるんですね。

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 それにしてもHustonは弾き辛かったです。弾き辛いというか持ちにくい。

 私は基本、自宅で椅子に座って弾く時もエレキは必ずストラップで肩に掛けます。車を運転する時に必ずシートベルトをするのと同じで、それが習慣になってるからそうしないと心持ちが悪い。所有ギターの全てにそれぞれ専用のストラップを付けてます(ギター毎に最適な材質や長さが異なるから)。
 だから当然、HustonもMay Queenもストラップを掛けて弾いてます。May Queenはまあまあなんとか弾けたけど、Hustonには苦しめられました。「膝に置けない」だけじゃなく、右肘の置き場所も無いのですね。

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 Hustonには1974年頃に製造されたオリジナルと、その10年後の1984年に発売されたリイシューの2種がありますが、このゴールドのHustonはたぶん84年版。

 フラット・トップのゴールド・ボディにウォルナット象嵌のストライプ入り。PUはシングル。これはカタログに掲載された事のない仕様の製品です。

 ピックガードは欠品していたので、私がレプリカを製作しました。V/Tノブもノン・オリジナル。その他あちこち傷あり・割れあり・剥がれありという状態のものでした。

 楽器として、また工芸品としても、けっこう魅力のある製品だとは思います。ただ自分的には実用性なさすぎなんで売却。これを使いこなせてるという人がいたら、ちょっと羨ましいかな。

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 今回の作例はTeisco Phantom-Bの「お別れ録音」なのでもあります。見た目は良いし音も案外良い激レア品だから所有し続けたいけど、弾き辛すぎて実用性は低い。売ろうか売るまいか一年ほど悩んだけど、2011年の初夏の頃、手放すと決めた。その後2作ほど他機種の「お別れ録音」に用い、今回のが「最後に一花咲かせてあげたい」的なつもりで作った最終作。しかしいかんせん弾き辛いんで。弦間ピッチがフェンダー系と同じ箱エレベがあったらいいのにと思う。


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