(お別れ録音)Teisco EP-9、2012年6月

2012/08/21
(改)2017/10/17


 テスコのEP-9は、1964年頃に発売されたと思われる小型のシンライン・フルアコ(支柱あり)。ビートルズが来日した1966年以降に発売されたテスコ製セミアコは全てボルト・オン・ネックで、トレモロ・ユニットと金属製ローラ・ブリッジを備えてますが、EP-9は、

・セット・ネック
・ヘッド裏にボリュートあり
・ブリッジは木製
・トレモロ・ユニットは無し

という仕様。66年以降のセミアコがGSブーム対応型なのだとすれば、EP-9は、それらとはずいぶん趣の異なる製品です。

弦長は628mm。ボディ全長は約98cmで、重量は約1.9kg。
総単板のクラシック・ギターが約1.7kg。合板のフォーク・ギターが約2.2kg。
だからシンライン・フルアコであるとはいえ、エレキで2kg以下っていうのは、どんだけ軽いのかという。ベニアを貼り合わせただけの、まるで強度補強されてないボディだと思う。非常に華奢な作りの楽器です。だから演奏する際も、思い切りガツガツ引き倒す的な扱い方は、自然と避けるようになってしまいます。

■アンプはYAMAHA YTA-25/マイクはAUDIX D1
■エフェクターなし/クリーン・トーン。

■PUポジションは
リードF
バック(4つ刻み)Mix
3rd verseのベース・ユニゾン・フレーズR


■ベースはTEISCO TB-64
■PUポジションはF+C
ART DUAL MPM-AUDIO FireWire 410という接続で卓直。
■DUAL MPの設定は
INPUTOUTPUT 
9時3時High Z Inputを使用


■ドラムの、スネアはKORG WAVEDRUM ORIENTAL
■その他のパーツは打ち込み。

■2012年6月15,16,22日録音

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 箱ボディと組み合わされたこのPU、通称・軍艦PUの音は、アタックがピキピキしてる点がディアルモンドのダイノソニックと似てなくもない。ダイノソニックほどピキピキではないですけど。
 音に腰が無くフニャけてるのは、ボディ構造とか使用弦のせいもあると思う。ゲージは009〜。テンションはベロベロなんだけど、それ以上太いのを張ると楽器全体が変形してしまいそうだ。

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 今回のお題はNight Train。最初の予定ではブギ的な、比較的アップテンポでストレートで、型通りのお約束感のあるブルース形式の何かしらをやるつもりでした。EP-9もあまり弾き易いエレキではないので、弾くべき事柄が予め決め付けられてるタイプの曲の方が、何かと無難だと思うのです。しかし、

・このエレキでガツガツ弾くのは似合わないし、
・歪ませるよりかはクリーンの方が良かろう。
・だから、ブギは止した方が良い。
・音色的には、ジミー・リード風のブルースとかに適してるかも知れない。
・しかしジミー・リードのグルーヴを再現するのは難しい。

といったような逡巡があって気が付いてみたら、
「ゆるめのNight Train+最後の方にちょっとJB's風味」
というような、へんな混合物の出来上がった次第です。

 Night Trainは色々な人が色々なアレンジでやってるけど、とりあえず今回は最も原型っぽいJimmy Forrest 1952を参照してます。それで、6ヴァース目はイーブン・エイトにしてJB's風。

 これが"JB's風"だというのは、JBのNight Train(1962)のコピーだというのではなく、それより数年後(1968年のI Got The Feelin'あたり?)から現れ始める、2拍アタマと4拍ウラにアクセントを置く、例のあのパターンをNight Trainに当てはめてみた、という事です。

 JBの、そのリズム・パターンがいつ頃どういう経緯で出来たのかについても私はよく知らないのだけど、Night Trainには既にそのアクセントが内在していたんですねという私的発見があったものだから、こういう段取りを組んでみたわけです。

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 1969年の"Mother Popcorn"あたりまで、このリズム・パターンは細かく16分刻みするスネアと組み合わされてる事が多いが、JBがバンドメンバーの総入れ替えを行った70年以降は、よりシンプルでソリッドなものに変化した、と思う。いや、私はJBの事もよく知らないので、間違ってるかも知れませんけど。
 それで、私のJB's風味Night Trainは16分刻みありの方なわけですけど、スネアはブラシ。KORG WAVEDRUM ORIENTALを使用してます。ヘッドがコーテッドではなく径が小さいからイマイチやりにくい件は前回の録音と同様ですが、今回はそれに加え、ブラシでフラムを叩くのは難しいという不具合、というか私の技術上の欠陥も発覚いたしましたですね。

 スティックでフラムやロールを叩くなら、スティックには弾力がありますから、ドラムをちゃんと練習した事のない私でも、とくに「切り貼り編集する宅録」という条件下でなら、まあなんとなくそれっぽい音は作れるけど、ブラシには弾力がない。つまり「勝手に、いい感じで」跳ね返ってくれたりはしない。スティックのはね返りを利用して連打する、という技が使えないと、LRの分担が逆転する場面が生じて、そこでまごつく。だからブラシでこういうパターンを叩くためには、やはりルーディメンツ、パラディドル等の基礎練習をこなしてからでないと無理だ、という事を知ったのが今回の録音です。

 尤も、ブラシをサックから半出しで使えば(スティックほどではないけど)弾力も生じるから、フラムもそこそこ叩きやすくはなる。だからそういうやり方にしてもよかったんだけど、「趣味の宅録」の主旨からすると、出来てない事の記録にも一面の有意義性はある。つまり、切り貼り編集すれば、たいていの不具合は修正できてしまうのが当たり前な昨今では、結果の見えてる帳尻合わせ的作業に労力を傾けるのは、むしろ徒労。これが趣味ではなく仕事で、期限までに完パケなきゃ等の事情があれば話しは別ですけど、自分の趣味として、自分自身を楽しませるために行ってる録音なら、何年か後に聴き直した時、下手を下手のまま残しておいたトラックの方が面白いと感じる場合もあったりします。

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 ベースはTEISCO TB-64を使ってます。とりあえず、すこぶる良い音だと思う。ただ、ART DUAL MPを通すと大抵のエレベは「良い音」になってしまうのかなという気もいたします。弦間が狭すぎるので普通のエレベとしては扱えませんし、私としては、この弦間に馴れたいとも思いません。指弾きよりもピック弾きの方が良いかも。


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