Teisco EV-2T
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カワイに買収されたテスコが、60年代の末(68〜69年頃)に製造したVOX PHANTOMのコピーです。

本家VOXは3PUですがテスコのは2PUが基本(3PUの上級バージョンも存在します)。
ボディ形状;シェイプも外周部のR加工も、本家に比べ丸みが多め。
ボディの大きさ;本家より若干大きい。
フレット数;本家もテスコも21Fで16Fジョイント。本家PHANTOMの最初期バージョンには0フレットなしもあるようですが、基本的には0フレットありなのが本家。テスコ製は0フレットあり


ヘッド形状もよく真似出来てますが、やはり本家と比べ大きいし、形状も完全に同じではないです。また、本家にはテンション・バーなんてものは無くて、1〜2弦のみリテイナー。

ブランドはDel Reyですが、リットーのビザール本によると、この製品は輸出専用モデルだったとの事。
後年、このボディにトムソン系のトレモロを載せ、ヘッド形状なども変更された製品がTIXブランドその他から発売されました。


ネック材が積層合板なのは、60年代末カワイのお約束。

それにしてもカワイ、なんでまたVOXのPHANTOMなんていう趣味なブツをコピーしたのかと思ってましたが、

やはり王者フェンギブのコピーは恐れ多くて手が出せず、苦しまぎれの選択でこれにしたとか。

そうではなくて、VOXのPHANTOMとは1963年に発売され、70年代以降も製造が続けられていた、これはVOX社の代表的な製品だったのですね。つまり英国やヨーロッパ方面では充分に人気高な製品だったと思われ。ですので商売としてこれのコピーを作るのは「しごく当然の選択であった」という事になりますか。カワイは他に、ティアドロップとかBURNSのコピーも作ってますし。

テスコ製ファントム・コピーのボディ・カラーは、この画像のが代表的なものだと思います(カタログ上では白その他も存在してるようなのですが、実際に目にすることの出来る現物のほとんどは青)。
本家の方は赤・黒・白の三色のみで、青いPHANTOMというのは作られてない(んじゃないかな)。ですので、とくにこれを英国やヨーロッパで販売する業者の立場からすると、「本家とかぶらない」あるいは「本家にはない付加価値が期待できる」が好ましかったのかも知れません。


カワイ製ファントムが本家と異なるもう一つの特徴が、ウッディーなパネルですね。

木目調エレキ、あるいは家具調エレキとでも申しますか。

エレキといえども、そのボディは本来ウッディーなものじゃないですか。それをペンキーな青で塗りつぶしておいてから、木目をプリントした塩ビ板で覆うというのは、実にユニークな装飾法であると申せましょう。

リットーのビザール本を見ても、木目調ピックガードなんてのを用いてる製品は、このカワイ製ファントム・コピーの他には、やはりカワイ製のティアドロップ・コピーが存するのみです。ですから、木目調ピックガードを用いたエレキというのは、全世界的に見てももんのすごくユニークで稀少なものという事になるんですが、見た目が地味なせいか、あるいは根本的にダサいという問題があるせいか、いまいち人気は低いようです。

EKO系のパーロイド仕上げなんて、それ専門のコレクターがいて、近年ではその中古相場もえらい事になってるようですけど、木目調ピックガードに関しては、

これが、これが良いんだよ!

みたいな主張を、今までに目にした事はありません(私が見た事がないだけかも知れませんが)。ちなみに、ボディの木部に装飾用の天然化粧板を貼るという手法は、今も昔も変わらず人気高。

トラ杢レス・ポールのトップが、たとえ無垢であったとしても、その本質は装飾用化粧板であることに変わりはない。

こういうギター愛好家の趣味・嗜好には、どこか理不尽なものがございます。昭和ブームだかなんだかの影響で家具調テレビも復権を果たした21世紀ですから、家具調エレキの再評価も待ち望まれるところ。


カワイ製ファントムならではの特徴その2;
立てて置いた時にボディを守るためのゴム足が付けられてます。これは本家にはない(はず)。こういうところの芸が細かいのは、日本製品ならではかも。

エンド・ピンはネックに取り付けられてますが、本家はボディの方に付けられてます。本家の方がボディ厚が多いのかも知れません(これは現物を見てみない事には分かりませんが)。

ロッドのナットは指板エンド側。



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2008/09/07


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