Teisco SM-2L | ||
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テスコが1966年に発売したジャーマン・カーヴ三兄弟の「末娘。」的な位置付けになるでしょうか、可憐なチューリップ・シェイプが人気のSM-2Lです。 ジャーマン・カーヴ三兄弟とはKシリーズ、Spectrum 5、そしてこのSM-2L 三兄弟の「末」というのは、ボディの大きさも、載せられた金属パーツの数や機能などのスペック面からしても、最も「小」であるという事でもあり、また価格も最も安いので。 SM-2Lは「ジャーマン三兄弟の中で最も安い」だけではなく、66年以降の全てのテスコのギターの中で一番安いのでもあります。 ラインナップ中の最安モデルですからたくさん売れたのではないかと思うのですが、現在の中古市場にはあまり出回っていないように思えます。とくに色物(レアカラー系)となると絶無かも。 | ||
弦長は628mmで普通にミディアムスケールのギターなんですが、全長(ヘッド先端からボディ・エンドまで)は960mmという、とても小型のギターです。全長960mmはMJ-2Lよりも小さいです(ZENON ZES-70と同じ)。 尤もMJは、タツノオトシゴ・ヘッドで長さを(無駄に)稼いでるのでして。 一方ボディ幅(お尻の方)は292mmで、これはMJ-2Lよりも広く、全体のプロポーションはとくに「変な感じ」はしません。リッケンバッカーの小型の方のモデル(325、あるいは625)に似ていますでしょうか。 ヘッド&ネック周りは「42ヘッド、22フレット、0フレットあり、ポジションマークはドット」という仕様。Kシリーズと共用のものだと思います。 SM-2Lは長さが短いだけでなくボディの厚さも薄く、非常に軽量になっています(ネック・ジョイント部の計測で約30.5mm)。 ちなみに他の機種のボディ厚は、MJもWGもKも大体35mm前後(個体差等で+/-1mm位の幅はあります)。 35mmが標準だったところを更に5mmも削るのは流石に無理があるというか、少々「不都合が発生」しておりまして、アウトプット・ジャック部分のザグリがボディを貫通してしまっています。その穴は円形のアルミパネルで隠されております(ボディ裏面の画像参照)。 アルミ製のピックガードも、薄い板材(厚さ1mm未満)をプレス形成したもの(62年のSS、SDと同じ手法)で、2mm厚の板材が使われている他の機種に比べずっと軽量です。 しかもボディのシェイプが「かわいいチューリップ型」となると、これはもしかすると「女性向け・レディース・モデル」として設計されたエレキなのか?という気もしてきます。 66年当時の宣伝用資料があればこの点ははっきり分かるのでしょうけれど、僕はその類のものは全く見た事がないので、これはあくまで想像です。 まぁもし仮にこのSM-2Lが「女性向けエレキ」として売り出されたものであったとして、いったいその当時にエレキをやってみようという威勢のいい姐さんなんてどの位いたものか。所謂ギャルバンが世間一般に普通の存在となるのは、遠い遠い未来の話です。テスコがプロデュースするレディス・エレキ、これは「早すぎた企画」として おもいっきりハズした だから現在SM-2Lの中古品が少ない理由は、前頁に書いた「コレクターが抱え込んでどーこー」ではなく、(全ラインナップ中最安値のモデルにもかかわらず)「実際、あまり売れなかったから」なのかも知れません。 あと型番SMは、当時としても充分SMとしての意味合いを持っていたかも知れず、この点もどーだったかなぁです。 テスコ的にはSmall/Miniという意味合いの型番ではなかったかと想像。 SM-2Lが発売されてから10年以上たった70年代末、GrecoにBRAWLER(BW)というモデルがありました。あのギターのデザインも「小型リッケンのフェイク」っぽいんですが、SM-2Lと似てるようにも思え(低音側ホーンの向きが逆なのですな)。 (いや、グヤはマロリーを作ったんですが) しかしBRAWLERとSM-2Lのデザインの間に直接のつながりは「ない、とも言い切れない」ような気にさせる変なグレコ(試作品?)も存在するようです。 この件についての関連サイト(というか証拠写真)へのリンクは貼りませんが、興味のある暇な人はgreco brawler ノーバインディングというようなキーワードで検索してみて下さい。 ところでGreco BRAWLERといえば元祖ギャルバン、ガールズのイリヤ様がジューシー・フルーツの時に使っていたのが有名で(というか有名人がBRAWLERを使用したのは、これが唯一の例か?)、グヤのシャープ5ベ−スを抱えた沖山氏と共にレコジャケ等を飾っていたのは印象深いところ。
イリヤがGreco BRAWLERを抱えてる写真を探したんですが見つけられず(たぶんシングル『なみだ涙のカフェテラス』のジャケットとかで使っていると思う)、唯一私の手元にあったのはこれ。機材ヲタ的にはむしろこっちの方が美味しいかも。 Guyatone LG-65Tを抱えてこのプロポーションということは、やはりイリヤってそうとう小柄な人なんですねぇ。LG-65Tのメタリック・ブルーは(リフィニッシュでなければ)かなりのレア物。バイオリン・ベースはEKO。 こういう小道具(使用楽器)のチョイスもつまりは「常に早すぎておもいっきりハズすの巨匠・近田先生」の嗜好の反映なのでしょうけれど、この場合のBRAWLERとは、つまり 現代化した「エレキ歌謡」あるいは「GS」の象徴 として用いられているのだと思います。 ちなみにジューシー・フルーツは「テクノ」なのでもあり、「元祖クラフトワーク等とは全く無関係に発達した日本独自の歌謡テクノ」という分野では重要な存在かも知れません(よく知りませんが)。 | ||
ボディ・カラーは黒→赤の3トーン・サンバースト。 このサンバーストの赤部分の顔料ですが、テスコも(まるでGibson並に) 尤も「初期の3TSの赤」はもともと「薄い赤」だったのかも知れず、そもそも3TSではなく2STなのかも知れず。塗装の問題はなかなか分かりづらいです。 「3トーン・サンバーストの赤が鮮やか」な代表選手はVegasシリーズで、これは現存する個体のほぼ全てが「鮮やかな赤」の状態のものと思います。Vegasの場合はボディ表面にメイプル(あるいはシカモア、とにかく白い木肌のもの)の化粧板がラミネートされているので、この塗装の特徴はより顕著に現れていると思います。 SM-2Lの場合は赤系があまりきれいに発色しないラワンに塗料が乗っているので、その「赤の鮮やかさ」はそれ程感じられないかも知れないですが、前頁のネックの裏面の赤い部分には66年以降(のどこか)で変更されたテスコの塗装の特徴が、よく現れていると思います。 | ||
テスコのソリッド・エレキのボディ材はほぼ100%ラワン(ドブ板)ですが、指板材は、廉価モデルにはローズウッド、高級モデルには縞黒檀なども用いられているようです。 もちろん楽器としての性能・弾きやすさ等については「指板材がどーのこーの以前のレベル」である事は言うまでもありません。 2枚目の画像のところにも書いた通り、ピックガードは厚い板材から切り出したものではなく、薄い板材のプレス形成。 ですのでネジ穴の周囲などに「たわみ」が発生しているのが特徴。 2つあるスイッチはそれぞれF/R PUのON/OFFスイッチ。それとマスター・ボリューム/マスター・トーンの2ノブ。 「フロントとリアのPUを2つともONにした場合はシリーズ接続になる」 という特徴があります。 のはずです。各PUを単体で使っている時よりも明らかにゲイン・アップしますし、スイッチの配線を見ても間違いないはず。なんですが、この件については一応直流抵抗値とかS/Nの組合せ等を調べてから記事を書き直すつもり。 | ||
先に説明した「ジャック用ザグリが貫通した穴を隠すアルミ板」、これに似たものは64年発売のスピーカー内蔵エレキTRG-1の裏面にもあります。スピーカーのマグネット部分がボディ内に収まらず、裏面に飛び出してしまったのを凸型にプレスした円盤で隠したのがTRG-1。 普通に考えれば、ギターの裏面にこんなパッチを貼っつけておくなんて「みっともない事この上ない」ですから、ジャックの取り付け方法を(フェンダー・ストラトのような)斜めに差し込む式にでもすれば良さそうのものですが、テスコにはTRG-1という前例があるからなのか、また斜め差し込み式ジャックは予算的に苦しいという事もあったのか、とにかく「これで良し」になってしまったんですねぇ。 尤もこれはテスコのエレキです。ボディに少々余分な穴の一つや二つが開いていたからって、とくに気にするほどの事でもないかと。 | ||
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