Thomas A-200
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Thomasブランドのテレキャスもどきですが、むしろカトラスもどきと呼ぶべきかも。
1970年代の中盤、主に通信販売で流通していた激安エレキです。

通販エレキのブランドはTomsonとか、このThomasとかFresherとか諸々あって、販売していたのは二光とかVivaとか?……なんですが、僕はこの方面については殆ど知らなくて。

製品の供給元は「テスコ弦楽器」だったようです。

1967年のテスコ倒産以後「テスコ商事」と「テスコ弦楽器」という2つの会社が存在していたのですが、この件についてもよく分からず、

☆PA機器を扱っていた
☆ファルフィッサの輸入をしていた
☆シンライン・テレキャスのわりとちゃんとしてそうなコピーを売ってた

のがテスコ商事の方。

☆60年代テスコ以来の余りパーツを寄せ集めてもどき路線を継承した

のがテスコ弦楽器、のような気がします。

それでこのThomasブランドのテレもどきですが、ネット上をざっと調べたところ、1973年版の広告が一番古く、最終が1977年。型番は
150TG
LG-151TG
LG-180
A-200
など多数あり(販売会社の違いとかセット販売の都合とかで使い分けていたのかも)、一応このページでは最終版(暫定)のA-200って事にしておきます。

通販エレキの広告には名作・名文句が多いものですが、このテレもどきは、

テスコ弦楽器最後の持てる力をすべて注入した傑作

だそうです。


まぁこのテの激安エレキってのは、いつの時代にもあるものです……じゃなくって、

例えば別名ごみギターであるテスコも、ああ見えて現役時代は高級品だった。少なくとも高額商品なのであり、60年代の日本には、激安エレキってのはまだ登場してない(と思います)。
風向きが変わるのは60年代末のエレキ・ブーム終了以後。厳しい状況に置かれた楽器業界から、

★まずは(テスコを買収した)カワイが持て余したパーツ、これを寄せ集め・仕立て直したマイナー・ブランド系がちらほらっと出現した後↓

☆コピー戦争勃発
☆激安通販エレキの登場

という流れになっていた(んじゃないかと、根拠なく想像)。

「ごみとして作られ、ごみとして扱われ、青春のほろ苦い想い出と共に捨てられる」

そんな運命が最初から約束されている、ホントの意味での「ごみギター」が登場するまでに、(1965年頃からのエレキ・ブームから数えて)約5年の歳月を要した日本のエレキ業界です。

この件に関しては、70年代以降の月賦販売(とくにヤング向け家電)とか通信販売の普及の度合いなどを調べてみれば、もう少し詳しい記事が書けるかも知れないんですが、それは今後の課題というか、そのうち気力が湧いたら(忘れてなかったら)、追記するかも知れません。


ちなみにエレキの本場アメリカの激安エレキといえば、
「日本製エレキ=アメリカのトムソンみたいなもの」
なわけで、日本製エレキの輸出が本格化するのが1962年頃(たぶん)。その以前にはスプロやシルバートーンが売られていたのですから、さすが本家はこの方面でもずっと先進国だったと思われます。

僕はこのトムソン系エレキ、けしてバカにする気はありませんが(使ってみようという気もありませんが)、やはりなんか寂しくなるというか、60年代製品の持つ「気分の高揚感」みたいなものが、もうまるで感じられないと思ってしまう。

それでもこのテの激安・通販エレキってのはお気楽で、敷居が低く間口の広い存在だから、日本のエレキ文化の裾野を広げるにあたって、非常に重要な役割を担っていた(かどうか)。
むしろ日本でエレキが、本当の意味で普及した(大衆化した)のは、激安通販エレキが登場して以降なのかも知れません。

楽器だけでなくラジカセとか、あるいは「家電製品一般」と言っても良いのかも知れませんが、60年代までは「新奇なもの」であり「高級なもの」であり「神聖なもの」ですらあったそれらの道具類が、ごくありきたりな所帯道具へと化していった70年代。日本人とエレキの関わりを色恋に例えるなら、

60年代=初恋時代
70年代=同棲時代

みたいなまとめ方をすると、じゃあ80年代以降はどうなんだってのがとても疑問です。


コントロールは各PUのON/OFFスイッチと1V/1T。
ブリッジのオクターブ調整は不可。

ペグはベースプレート一体型6連オープン・バックに樹脂ブッシュという、10年来変わらぬ仕様。

ほんとにこんなギター、1977年になっても販売されていたのであろうか。。。


このトレモロ・ユニットについてはパーツの写真帳の方にも載せてありますが、トムソンのムスタングに使われているユニットと基本的には同じもので、ブリッジ一体型ではない方のタイプですね。

2007/07/14
(改)2007/07/21




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