1966年発売のSM-2L用として登場したトレモロ・ユニットです(と思います

もしかしたら66年以前から使われていたのかも知れませんが、はっきり分かりません。仮に、

・ストライプなしピックガードの個体にも使われている
Teisco BR66"Roller"より古いタイプのブリッジと組合わせて使われている

というような例が存在すれば、66年以前から使われていた可能性が高まります。


トレモロ・ユニットとしての基本的な構造は、モズライトの比較的忠実なコピーです。

・押しバネ1本
・可動支点は回転軸
・ボールエンド固定位置に段差が設けられてる←これが一番モズっぽい点

テスコのトレモロとしては最も「モズライトのコピー」に近いので、このユニットの当サイト内通称をモズ式トレモロとでもしておこうかと思います。


オリジナルのバネはBigsbyのと比べ線径が細く、復元力はそれほど強くなく感じられます。つまり「アーム・ダウンしたらダウンしたまんま」になり易い。


使われている機種はSM-2L/MJ-3Lの2つのみ。意外に少ないです。

その他、テスコ倒産後=カワイ製になってからのテスコでは、EV-2TV-2(の別バージョン)、R-2等にも用いられてますけど、それらは事実上の別会社となってからの製品であるし、カワイのパーツ使用法には一貫性がないしで、このユニットの用いられた機種としてカウントするのはどうかと思う。

 67年のカタログによると、全ラインナップ(のソリッド部門中)最も安価なのがSM-2L、そして3番目に安いのがMJ-3L。ですからこのモズ式トレモロは廉価モデル用ユニットという位置付けの製品という事だと思うのですが、同時期に使われていたもう一つのユニットK-Trmと比べ、機能的にとくに劣るような所はありません。
 ただ、金属製品としての加工精度はK-Trmの方が若干上のようにも思えます。部品点数はK-Trmの方が多く、寸法も大きい。ですので仮に、この2つのユニットにパーツ単体としての価格を付けるなら、K-Trmの方が高額になるのは間違いないです。


 このユニットは製造時期によるバージョン違いが3種あり、このページのものは一番最初のものです。
 上部プレートに、弦を止めるブロックを固定するためのボルトの頭が3本出ているのが初期型の特徴。


ボディへ固定する木ネジは6本。


可動部支点。


 これは支点用のネジ。

 日本製トレモロ・ユニットの可動部支点にボール・ベアリングが用いられるようになるのは、おそらく1967年6月発売のYAMAHA SA-30あたりからではないかと思われます。倒産前のテスコ製トレモロ・ユニットで、ボール・ベアリングが用いられたものはありません。


 ボールエンド固定位置には段差が設けられてるのは、アームの操作時に各弦の音程間隔を保持させるための工夫で、モズライトに倣ったものです。スタインバーガー”トランストレム”式ユニットの、もっとも素朴な形態ですね。
 その段差の位置関係は3弦=巻弦のセットに対応しており、微調整は出来ません。ですので現在一般的な3弦=プレーンのセットでは効果がない/むしろ逆効果になってしまうものなんですけど、1〜2弦の関係のみでは良好に機能しております。4〜5弦の関係もなかなか良好。
 5〜6弦の関係はNGで、プレーン3弦と他の弦との関係は当然すべてNG。隣り合う弦ではなく離れた位置(1弦と6弦とか)の関係もNG。
 60年代中のエレキ弦のセットは、現在のものより低音弦が細かったので、


こんなようなセットも売られてる昨今です。

昔風のナロー・ボトムのセットに巻の3弦を組み合わせたものを張れば、このユニットのトランストレム効果もちゃんと機能するのかも知れません。


2007/03/16
(改)2010/08/17



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