Guyatone SG-25T Julienのピック・ガードです。
SG-25T Julienは木部をヤマハが製作し、それにグヤ社のパーツをアッセンブリした製品ですので、ボディのシェイプはヤマハのSAシリーズと同じ。ピックガードの形状もSAシリーズと同じです。

材質については正確には分かりませんが、アクリル板に似た質感です。LG-120Tのピック・ガードと同じ素材だと思います。


遠目に見ると白-黒-白の3Pなんだけど、黒のラインは線書き。実はこれ、

なんちゃって3Pピック・ガード

なんですね。「なんちゃってハンバッカー」をはじめ、国産エレキには様々な「なんちゃってテクノロジー」が用いられてますが、ピック・ガードもその適用対象だったわけです。しかしなんだってこんなものまで「なんちゃって化」せねばならぬのか?(もっと他に労力を傾けるべき点があるだろ#っていう)。これは頓知エレキにありがちなおふざけに過ぎないのか?それともこの、アクリル板の断面に細密なラインを書き入れるという一見無意味な行為にも、何らかの必要性があったのであろうか?

1965年までの日本製ソリッド・エレキのピック・ガードの多くは金属製です。おそらく(加工コストも含め)樹脂製よりも安価、しかも低技術で製造可能だったのでしょう。

個人工房でワン・オフの金属製ピック・ガードを作り、しかもメッキあるいはアルマイト処理まですると非常に高価なものになりますが、量産メーカーが下請けの工場等に大量発注するなら金属製の方が割安(これは、65年以前の日本での、合成樹脂製品の普及度がどの程度であったかとも関係しますが)。どのみちPUなど、ピック・ガード以外のパーツでメッキ屋さんのお世話になるわけだし。
箱ものエレキには65年より以前から樹脂製ピック・ガードが用いられてますが、板厚は大抵1mm以下の薄いもので強度・弾性ともに低いものです。ですのでPUを吊り下げたりコントロール・ノブを取り付けたりといった用途に用いられる例はほとんどありません。

60年代の後半になるとソリッド・エレキにも樹脂製ピック・ガードが用いられるようになのですが、多層塩ビ板は最初、最も高額な機種に限って用いられていたようなのですね。多層塩ビ板という素材自体が高額なものだったとも考えられます。

60年代後半の新製品で、多層塩ビ板ピック・ガードの用いられた機種は、
・Guyatone LG-200T 1965年発売
・Teisco Spectrum5 1966年発売
・YAMAHA SG-5/7  1966年発売
等々。
グヤのSharp5は67年の発売で、定価は¥35,000-。LG-200Tの¥37,000-とほぼ同じクラスの製品なのに、ピックガードの素材はこういう一世代前のタイプが用いられてます。Sharp5のピックガードは非常に大型のものなので、コスト的に無理だったのか、あるいは初期の多層塩ビ板は経年による収縮率が高く、その影響はサイズに比例して大きくなる、という事を見越してSharp5に多層塩ビ板を用いなかったのかも知れません。
66年になると、さほど高価でない製品(セミアコのSG-12T、定価¥15,000-)などにも多層塩ビ板ピックガードが用いられるようになります。

ヤマハのSAシリーズのピックガードも多層塩ビ板です(黒-白-黒の3P、あるいは黒-白-黒-白-黒の5P、その他ベッコウ柄もあり)。グヤのJulienはヤマハSAのライト版みたいな製品ですけど、ヤマハから部材の供給を受けて製造してるわけで、ピックガードは多層塩ビ板を用いるのが標準仕様だったみたいなんですね。どうも私の入手した個体のピックガードが、イレギュラーな仕様みたいです。ですのでこの、なんちゃて3Pピックガードが生まれた背景には、

1.何らかの事情があってボディの数とピックガードの数が合わなくなり、
2.間に合わせ品を単色アクリル板で作ったものの、
3.やはり白一色のノッペラボウではいかんという事になり、
4.しかたなく線を1本書き加えた。

というようなドタバタがあったのかとも想像されます。先に述べたように、こんな作業に精出すくらいなら#ってのもあるんですけど、仕様を揃えようという律義さと作業の几帳面さは尊敬に値する(かも)なんて事も書き添えておきましょうかねえ。

一応、
・多層ピック・ガードの用いられてる機種=高級
・単色ピック・ガードの用いられてる機種=安物
という格付けになりますけど、LG-150Tに3Pピック・ガードは絶対に似合わないと思う。マロリーだってそうですね。だから、何でも高級っぽくすれば良いというものではない。しかし一方、フェンダー・ストラトキャスターのピック・ガードは1Pでも3Pでも、アルミでもベッコウ柄でもOK。楽器のデザインとは不思議なものです。

2010/04/05



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