1968年発売、Teisco M-26"Michelle"のピックガードです。基本、一般的なフルアコ用ピックガードと同じものですけど、Michelleは丸穴のフルアコ。ですので普通のフルアコ用とはアウトラインが一部異なりますね。

 60年代中頃はアルミ製ピックガード一辺倒だったテスコですが、66年にスペクトラム5で初めて3P樹脂製ピックガードを採用。倒産しカワイに買収されて以降の製品(67年発売のDG-67から後のもの)のピックガードは、全て樹脂製となります。

ですので67年以降のピックガードは、ブランドはテスコでも製造したのはカワイの工場(ないしカワイにパーツを供給していた下請工場)の産品という事になります。

 スペクトラム5のピックガードは金属製のエンブレムで装飾されてました。DG-6のピックガードは無地。そしてMichelleのピックガードには白いモデル名。しかしこれはデカールを貼ったりペイントしたものではありません。精密な彫り文字です。電動彫刻機か精密ルーターで彫ったのだと思います。

第1層の黒を打ち抜いてから2〜3層を貼り合わせたのだとも考えられますが、 eの中洲になる部分、

ここもきちんと成形されてるので、これはたぶん彫ったのだと。

 とりあえず「ピッキングで削れて消えてしまう」という心配がない点は評価に値する。エッジはシャープで精密感があり、白黒の対比が明快。実際、これは美しいものだと思います。しかし外国のメーカーは、たかがピックガードに対してこんな手間の掛かる装飾を施したりはしないと思う。

外国メーカーがよくやる装飾は、
・塩ビ板の柄にこだわったり(イタリア系)
・透明アクリルの裏面にペイントしたり(グレッチ等)
・金属製エンブレムを貼ったり(Kay等)
・あと、普通にピックガード表面からプリントなりペイント(ギブソンのアコギ等)

 どのみちあれです、ピックガードの装飾に凝ったりするのは主に2流・B級な楽器メーカーばかり(と、↑に一覧を書き出してみてそう思った)。それに、プラ板の柄が派手だったりブリキのエンブレムが貼ってあったりするのは、いわばB級のゴージャス感だし(好き嫌いでいったら、私個人的にはそういうのすごく好きですけど)。
 カワイ製ピックガードの彫り文字は、
ぱっと見は地味→よく見ると芸が細かい→その工芸的緻密さに魅惑される
という特徴があり、つまりこれ実に日本的なものかと。
 日本のエレキ・メーカーが多層樹脂板のピックガードを用い始めたのは1965年発売のGuyatone LG-200Tあたりからで、日本はこの分野の後進国だったんですよ。それがわずか数年で、本家アメリカ人なら考え付きもしないしやろうとも思わない方向へガラパゴス進化したわけですね。


2010/08/20



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