Teiscoの片側6連と42ヘッドの機種に使われているペグです。時期的には(たぶん)1966年以降。(それ以前のペグは、金属部分は同じですが角張った形状のツマミでした)

Guyatoneのペグも金属部分は同じで、ツマミもオーバルですが、このツマミはテスコのとは少し違います。

ヘッドに固定するためには木ネジ2本が必要。ベースプレートの寸法自体も大きく、これを片側6連並べると、どうしてもヘッドが巨大にならざるを得ないというペグです。

ペグ6個を本のネジで固定出来るようにしたクルーソンのような工夫はなく、要するにこのペグはエレキ専用に開発された物ではなく、日本製エレキが登場する以前からアコースティック・ギターやスティール・ギターに用いられていたものではないかと思います。
このペグ自体はべつにトホホ物件ではないのですが、それをエレキ用として用いざるを得なかった、しかも片側6連に並べてしまった日本の草創期エレキ・メーカーの行動はトホホであったと……


42ヘッドとかタツノオトシゴ・ヘッドとかはテスコの象徴と呼べるくらいの独特のデザインですが、あれを生んだ(というか、あーなっちゃった)のも、つまりは片側6連用に設計されたのではないペグを採用してしまったためで、製品のリリース順に並べてみると、

・とりあえず6個並べたら無闇に巨大になってしまったタツノオトシゴ・ヘッド

・それが不評だったのか事故が多かったのか、Fender風の曲線を捨て直線主体でまとめる事であまり巨大さを感じさせない事に成功した(かも知れない)ピストル・ヘッド

・更なる機能性とデザイン製(というか受け狙い)を追求した42ヘッドの登場……

尤も「ヘッドを小型化したい」という目的だけならば普通に3+3ヘッドにすれば良いのですが、3+3ヘッド用には別に専用のペグがありまして。また42ヘッドが作られた理由は他にも色々説があり……だいたい42ヘッドは、べつにそれほど小型でもなく。

グヤトーンはわりと早い時期にFender "F"Key式ネジ位置とでもいうべきペグを採用することで6連ヘッドの小型化を実現しましたが、テスコのペグが"F"Key式になるのは1968年以降(カワイ買収後)です。

1967年のテスコのカタログを見ると、ラインナップされている製品は42ヘッド3+3海老尾ヘッドが主流で、6連ヘッドのものは一つもありません。独自のヘッド・デザインがテスコのブランド・イメージとして(それなりに)定着し、今更「Fenderに似せる」という必要も(社内的には)感じられなかったのかも知れません。





このペグ、回転がスムーズでない/ガタつきが多くて信用ならないから実用品としてはまるでイマイチですから、GOTOHその他の現行品リプレイスメント・パーツと交換してしまうのが良いに決まっています……なんですけれど、テスコの場合、フェンダーやギブソンに比べヘッドが厚いという特殊事情がありまして、

全てのテスコ製品のヘッドがフェンギブより厚いのではないですが、テスコ中期の代表的なモデル……要するにこのペグの用いられている機種のほとんどは厚ヘッド。

とくにロック式ペグ(これとかこれ)ではストリング・ポストの長さが足りず、少々具合が悪い場合が多いのが苦しい。

尤もロック式でないペグならとくに問題はなく、またロック式でもストリング・ポストの長さを調整出来るGOTOHのH.A.P.ならOK(のはず)。

テスコのペグ交換を行うのはトレモロ・ユニットのチューニングを安定させるという目的もあるので、出来ればロック式を用いたいところ。それが難しいとかH.A.P.みたいな高級品を使わないといけないとなると、交換するのもちょっと躊躇してしまうといいますか、「いっそオリジナルのままで良いかな?」という気持ちもしてきます。
あんまり錆がひどかったり変形したりしているものは流石に苦しいですが、この画像のものぐらいの良コンディション品なら、実用度もまぁまぁ(かも)。

あとこのペグは作りが華奢で非常に軽量ですから、それを現行の重い製品に替えてしまうと音の方への影響もそれなりにありそうです。








ストリング・ポストに弦を通す穴が2個あるのもグヤのものと同様。
2007/01/15
(改)2007/05/18


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