Teisco EB-18に用いられていたペグです。BS-101の初期型にも、このペグが用いられています。

EB-18が発売されたのは1962〜3年頃。

エレキにはアコギ用ペグの流用、ではないのかも知れないけど、実際のところアコギ用とほとんど変わらない仕様のペグを用いて「それで良し」としていたテスコですが、ベースの場合は初期のモデルから、ちゃんとエレキ・ベース専用に設計されたペグを用いてました。

なんせエレキ・ベースとは「日本製エレキの出現する以前には存在しない楽器ジャンル」だったのですから、流用可能なパーツなども当然無かったわけで。


分解すると↑のようになるんですが、


ストリング・ポストとギアはネジ止めではなく、ピンを打ち込みしっかり固定してあります。


ツマミとカバーは分解できます。薄い板材をプレス成形したカバーがツマミの軸受けを兼ねているので、強度・精度的にはイマイチではなかろうか。ポスト&ギアの接続はガッチリだがツマミの軸は軟弱。ここら辺のチグハグさが、なかなか初期の日本製エレキな感じではございますね。


ツマミの形状はダンボ型。それよりむしろ
ゼンマイのネジ型
と呼んでみたいわたくしです。古い柱時計やブリキのおもちゃ等のゼンマイを巻くのに使うキーは、こういう形のものが多いですよね。1960年代の前半(昭和30年代)の頃の時計のほとんどがゼンマイ式だったとすると、当時の人々は毎日のように、こういう形のキーを摘んで時計のネジを巻いていたわけです。
 「ネジを巻く」という言葉は「三味線のチューニングをする」という意味にも用いられますが、これも昭和30年代の日本人、少なくとも楽器業界人にとってはまだまだ一般的な用法だったのではなかろうか。ですからこのペグのツマミの形状は、

ベースのチューニングをする←→三味線のチューニングをする←→ゼンマイのネジを巻く

という三つの言葉の相互連想関係が渾然一体となった結果の形象化なのであります
なんて断言するのも嘘っぽいというか、根拠薄弱な感じはしますけど、しかし例えば、エレキというものを実際に手にした事がないマンガ家やイラストレーターの人達がエレキを描く時には、ペグのツマミはこういう形になる事が多いような気がしませんか?……実際はどうかってのはおいといて、我々みんなが素直な心で思い描くペグ、「ペグとはこうあるべきだ」と思える理想のペグ、つまりいわゆる
「心のペグ」
のツマミ形状は、これなんだよなあってオレは思うんだよなあ。言いたい事は伝わらないかも知れないけど、べつにいいです。

ちなみに、私の手元にあるバンドマンガを見てみると、DMCのクラウザーさん使用機(ジャック・イル・ダークから譲り受けた悪魔のギター)のペグ形状はグローバー・ロトマチック型。意外に写実的である。
『中村メイ子をかき鳴らせ』に登場するエレキは細部までよく書き込まれるので、当然ペグも写実的。写実的すぎて主役のメイ・クイーンに対し、これは1968年製ではなく近年の再生産ものではなかろうかという疑惑が湧くのは残念。


重量は56g。

カバード・タイプでストリング・ポストはスプリット・タイプ。メッキがしっかりしていて、現在でも充分美観が保たれているものも多いです。

ただしポストの径やスプリットの溝幅は、現代の標準からすると規格外。ツマミの形状も、使いやすいかどうかと問われれば、使い辛いです実際のところは。

リットーのビザール本・35頁にはカワイ製エレキ・ベースの画像が2本載ってます(1965年と66年製)。画像で見る限り、カワイ製品のペグもテスコのと同じですね。

2009/12/12
(改)2010/04/23



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