腐ってもヤマハ

1960年代の安物エレキの世界には
「PUやスイッチは、多ければ多いほど偉い」
という格言がございます。格言というか名言というか諺(ことわざ)というか。こういったのは他にも色々あって、
「腐ってもヤマハ」
というのもその一つ。他にはというと……ちょっと思い付けませんけど、まだまだあるはずです、のような気がします。思いだしたら追記します。

「腐ってもヤマハ」というのは、
「腐っても鯛」のモジリ。誉めてるようで誉めてない/誉めてないようで誉めてる。どうとも受け取れる曖昧さがあるからこそ格言。
 「腐ってる」のは、今目の前にある特定の個体・個別の現象であって、それが腐ってると言うのは貶してる事になるけど、一般的概念としての「鯛(ないしヤマハ)」が持つ価値の優位性は、一個体が腐った程度では揺るがないほど盤石であると認められる場合に限り、この言辞の形式は格言として成立する。つまり例えば、
「腐ってもフォトジェニック」
では格言として成り立ち難いわけです。もっとも、ヤマハ製エレキなんてものはどれもクソだと思ってる人も多いでしょうから、「腐ってもヤマハ」をいつ誰に向かって言っても、それを格言として受け止めてもらえるとは限らない。ちょっと面白い一言を言ってみたつもりなのに、で?っていう反応しか返ってこない可能性は高いですね。「ヤマハ」には「鯛」ほどの一般的な権威は無いでしょう。しかしそれだけに、誉めてるようで誉めてない/誉めてないようで誉めてる曖昧さは二重に増量されてるとも言えるので、
「腐ってもヤマハ」
これはやはり、格言としてはなかなかの名作ですよねみたいな話しはさておいて、

当サイト管理人も格言をひとつゆってみるテスト;
「エレキは、安ければ安いほど偉い」
これは格言というより座右の銘かもですけど、要するにそういう事です。エレキ1本に何十万円も使う事ほど愚かな買い物はない。エレキという存在が社会に広まってなかった1960年代以前、また日本製エレキの品質が低く、まともなエレキといえば外国製のものしかなかった1970年代より以前は話が別ですけど、80年代以降の日本人にとっては、どんなに高くても新品で15万/中古で8万。それくらいを出せば一生遊べるエレキが手に入ります。

 もちろん自分を励ますとか渇!を入れる、あるいは何かの記念にというような理由でガツンと1本、すごく高額なエレキを買うってのはありですけど、そんな機会は一生のうちに何度もない。基本、機材に金掛ける余裕があるなら
 ・リハスタの使用時間を長めにするとか、
 ・CDを少し余分に買ってみるとか、
 ・興味のないアーティストのライブにも外様参戦してみるとか、
 ・ちょっと真面目にスクールに通ってみるとか、
 ・気分転換に映画を見るとか、
 ・旨いもの食うとか旅行するとか、
ともかく、お金の使い道なんて他にいくらでもあるものです。というか音楽を趣味とするならこういう出費は必ず生じるんですから、無理して高いエレキを買って支払いに追われ、バンドで遊ぶ余裕が無くなったりしたら本末転倒。いったい何がしたかったんだという事になりかねません。

一応念のために書いておきますけど、この文章はエレキを演奏のための道具として用いる人を対象とするもので、それ以外の目的で買い集めてる人の事は考慮してません。

 さて、「エレキは安ければ安いほど偉い」というのは「安ければなんでもいい」というのとは違います。

 というか、筆者はさすがにそこまでは悟り切れてません。自分の演奏力を客観的に評価するなら、たぶん俺、50年代のヴィンテージ・エレキとフォトジェニックのどちらを使っても、弾ける事、弾く内容はおんなじだよなって思うんです。きちんと弾きやすく調整されてさえあれば、何を使っても同じだよエレキなんて。
 というのを頭では分かってるつもりなんですけど、実際の行動に表せない。そこまで思い切れない生煮えな俺様だ。まあそのうちフォトジェニックを買ってサンプル・サウンドを作ってみたりもしたいなと思ってますけど、今のところは「安ければ安いほど」の中でもなるたけまともそうなものを選ぼうとしてます。そこで、

「腐ってもヤマハ」ですよ

って事ですね。およそ70年代の後半から80年代の途中までの約10年間に製造されたヤマハ製エレキは、コンディション良好の中古品でも非常に安いです。当時の定価8万円のSJ-800がヤフオクに4万円台で出品されてて、買い手が付かずにずっと回転寿司になってるという現状。これがコンディション不良のものとなると更に安い。捨て売り状態ですね。それは「腐ってもヤマハ」というより、
「腐ったヤマハ」
なんですけど、自分的には木部さえ生きてればOK(金属パーツはどうせ全交換しちゃうんで)。というわけでこの数年はヤマハのエレキを買う事の多い私ですが、色々買い集めた中でもとくに「腐り度」の高いヤマハを以下に紹介。

SF-500

SFシリーズの一番安いやつ。地味で面白味のないエレキですから、たいした値段はしなさそうに思うんですけど、まともなコンディションだと、けっこうな値段するんですよこれ。

そこで私が買ったのはこのゴミ。
 ・ボディは黒ペンキで塗りつぶし
 ・テールピース欠品
 ・トグル・スイッチ欠品
 ・PUは生きてます
 ・V/Tノブ2個破損
 ・全体にホコリまみれの汚物

きれいに直して資料を取って、ネックがまともなら転売する予定。テールピースはヤマハ独自規格だから汎用パーツではリプレイスメント不可。これが欠品なのはちょっと苦しい。


しかしこの前オーナーさんのやり方は「漢」だよね。見た目は漢、しかし合理性もあります。

「なんだこれでいいのか☆」っていう発見がございますよね。

実際、弦はしっかり固定されてるし、音も良いような気がする(ほんとかよ★)。
弦は腐り切ってますが、巻弦をボヨーンとハジいてみると、なんかこれ良さそうな予感がするんですよね(あくまでも予感ですが)。そこら辺がつまり「腐ってもヤマハ」かなという。


BB-1200(フレット・レス改造)

買ったのは5年以上10年未満前(細かくは忘れた)。私のメイン・ベース。素晴らしい音。これさえあればいつでも安心。ただしフレット・レスなのでそういう用途限定。見た目はみすぼらしい。入手した当初はボディの表面も黒ペンキで塗りつぶしてあった。

まったく、なんだって昔のバカタレどもはエレキをペンキで塗りつぶしたがるものかと思いますけど、そのおかげで現在の私が激安入手出来るんだから、むしろ感謝しなくちゃいけません。

 ボディ表面のペイントは落としたんですが、裏側までする気力が湧かぬまま5年以上放置。作業自体は簡単なんだけど、緊急性がないといつまでも手を付けない私です。


元はフレットありのBBを、素人改造でフレット・レス化してあります。作業は荒く指板面に凹凸がありますけど、それはあまり気にならない。しかし指板エンドのアレは許せん★

ヤマハのロッドを回すには、普通のメーカーのよりも首の長いボックス・レンチが必要なんです。それが入手出来なくて、面倒臭くなってエイヤ!ってやらかしたんじゃないかと想像。当然きれいに修復したいと思ってる(のまま5年以下略


ナットもよろしくない。弦溝掘って極端に弦高が下げられてたから、現状はナットの下にボール紙の細片を敷いて高さを合わせてあります。そんなんでも音はすごく良い。という事は、

1.ナットの材質で音が変わるというのはデマである
2.ナットをちゃんと直せば更に素晴らしい音になる

それは一旦、ナットを直してみれば分かる事です。いつかその作業をしようと思いつつ5年以下略

それにしてもこのベースは、こんな悲惨な状態なのに音良いです。これは真性「腐ってもヤマハ」。


SG-1000

全体を青ペンキで塗りつぶしたSG。なんだって昔のバカタレどもはエレキを以下略

SGにペンキを塗るのは、むしろ定番ですけどね。たぶん高中関連の何かの影響なんだろうけど、私はよく知りません。

こういう素人塗装のペンキには、シンナーで拭き取れるものと、それが不可の2種類あって、シンナーで拭き取れるならレストアは簡単。

このSGの青ペンキはシンナーで落とせないタイプです。しかもセットネック/ラウンドトップ/カッタウェイが2つ。最悪のパターンですね。背面を少しだけ剥がしてみたところ、どうやらヤマハの塗装にありがちな白濁が起きてる悪寒。
いっそ、オリジナルの塗膜も削り落として再塗装しようか?


保存状態の悪い金メッキ製品はアレな事になりがちですけど、これはちょっとアレすぎ。


”ダイナミック以前”のアコギ


これは「腐ってもヤマハ」とはちょっと趣旨の違う物件ですが、ついでに紹介。

ヤマハ・ダイナミック・ギターの製造開始は1961年ですが、この画像のギターは、それより以前のもの。具体的に何年かというのは全く不明。

弦長は約615mm。ボディの形はイタリアのマンドリン・メーカーが作るギターに似ていて、ボディのくびれが深く、八の字の2つの輪の大小差が少ない。昭和初期に古賀政男が使用してたのはこういうスタイルのギターで、セゴビアらが中心となってフォーマットを定めた20世紀型クラシック・ギターよりも以前の様式のものです。


ラベルを見ても製造年の手掛かりは無し。

このギターはブリッジが剥がれかかっていて現状は使用不可。全体的にもボロボロ。そうのうちヤマハ社にリペアに出して、ついでに出所由来などを調べてもらえたらいいなと思ってます。


2010/10/19




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