2007/06/17

近頃は、マンションに対してもヴィンテージなる用語が用いられるそうじゃないですか。
ヴィンテージ・マンション
とかいって、プレミアも付くのかな?高いらしいです(よね?)

そこで、ギターの世界の商習慣に馴れてしまったわたくしの悲しい脳みそに、真っ先に浮かぶ考えは、
「ヴィンテージと言っても、ピンキリなんだろうなー」
という事でして。
要するにマンションの世界にも「名ばかりヴィンテージ・マンション」とか「なんちゃってヴィンテージ・マンション」とか、果ては、
じゃぱびんマン
の類が掃いて捨てるほどの数あって、中古マンション市場に無駄な混乱を引き起こしているのであろうよ。

しかしまあ、日本国内にある建築物は全てMIDE IN JAPANだと思うので、ことさらじゃぱびんという括りが設けられる事はないか。あと、コピー・モデル。

それにしてもあれですよね、なんで建築の世界には「コピー・モデル」ってないのか?建売住宅地に並んでる一戸建てはどれも似たようなものだから「コピー製品」みたいなものですけど、僕の言いたい「建築のコピー・モデル」とはそういう意味ではなく、例えば
国会議事堂コピー
とかの事。個人用住宅を建てる際に、建築主(おとうさん)が、
「ここはひとつ、国会議事堂コピーでいってっみかー!」と英断を下す
そういう事はあり得ないのか?

もちろん国会議事堂の原寸大コピーは(普通の個人資産の範囲では)無理ですから縮小コピーになります。住宅街の中に突然国会議事堂(の縮小版)が出現したらテンションあがるぞーーー住みにくそうですけどね。他に「姫路城」とか「サグラダファミリア教会」とか「クレムリン」とか「六本木ヒルズ」とか「出雲大社」とか、なんでもお好みで。

「コピーしたくなるような有名建築=たいていは巨大建築」ですから、縮小コピーにしないといけないのはもちろんの事、実際に住む事を考えたら、やはりある程度のデフォルメ(縦横の比率を変えるとか)は必要で、結果的に妙に背の高い国会議事堂みたいになってしまいますが、これはギターの世界に於ける「70年代初頭はんぱコピー期の製品」に相当するものです。それでもこういう文化(というか流行)が一度定着してしまえば、やがて完コピ競争が始まるのは必至。

「日本のエレキ製造技術はコピー戦争を経験する事で大きく進化した」とされるように、日本の建築文化も「コピー」を経験する事で更に一段の成熟を見せるのではなかろうか?コピー経験のない日本の建築界とは、ギターに例えるなら、テスコやグヤが絶好調で、オリジナル・モデルだけで勝負していた1968年以前の段階に等しいわけです。近頃多い「鉄筋が少ない」とかの問題も、あれは要するにテスコなんだと考えれば、実にすっきり納得がいきます。


ところで、この画像の建物は市谷砂土原町に建つグリーン・ハイツ。間もなく取り壊される予定です。
築30年、あるいはそれより更に古いかも知れない建築ですから、これは充分ヴィンテージなものではないかと(不動産の素人であるわたくしには)思えるのですが、壊されちゃうってことは「ヴィンテージとしての付加価値は認められていない」という事なんでしょう。しかしこの愛らしい外観、これがギターだったら、絶対に欲しがる人はいるはずで、ヤフオクにでも出せば、高くは売れないにしても、悪くしてもじゃぱびんレベルの価格で引き取ってくれる人は現れるはずで。

こういうところもギターの世界に比べて建築は、「文化(趣味)としての成熟度」が遅れてると思わせる点ですね。
マイナーブランドもの・珍品・奇品のマンションばかりを集めてニンマリしてるコレクター。建築の世界にもそういう趣味人が現れるようになるまで、あといったい何十年待たなければならないのか……


この建物の一番のおしゃれポイント、
出てない出窓
をクローズアップ。


住民の引っ越しは全て完了しておりまして建物の中はもぬけの殻なんですが、入口のところに自転車が一台、置き去りにされてます。


僕はこの建物、なんとなく好きだったんです。無くなってしまうのはさびしいので、おもわず無駄長文をだらだら書いてしまいました。



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