Teisco 1974/05
テスコ株式会社 1974年05月01日
A4版16ページ(A1・4つ折り)

テスコ略史(参照資料はリットーのビザール本)
1946年アヲイ音波研究所設立
1956年日本音波工業(株)に改名
1961年木部専門の工場としてテスコ絃楽器(株)設立
1964年桶川工場が完成
日本音波工業(株)をテスコ(株)に改名
1967年(株)河合楽器製作所に吸収合併される
テスコ商事発足。テスコ・ブランドのエレキ販売はテスコ商事により継続される
桶川工場でのギター製造業務は河合傘下の遠州工芸に移され、テスコ(株)は河合楽器の電子楽器を製造する工場となる。
テスコ商事は、70年代の中頃に解散。
←このカタログはテスコ(株)のものですが、テスコ・ブランドのエレキが掲載されてます。という事は、テスコ商事の解散は74年以前だったのかも知れません。
1972年遠州工芸が河合に吸収され、河合楽器浅田工場となる
1974年国内OEMエレキ・ギターの製造開始。
カワイがOEMしたブランドといえばフェルナンデス。フェルのストラト・コピーの発売開始は73年、フェル社サイトによると72年。情報が交錯していてイマイチはっきりしないんですが、ともかくフェルのストラト・コピーが最初からカワイ製だとしたら、浅田工場でのOEM生産の開始は74年よりも前、という事になります。
1977年テスコ・ギターの生産中止
カワイ・オリジナルのMシリーズ・Xシリーズを発売
1978年Fシリーズ・ムーンサルトを発売
1992年Teisco Spectrum 5を復刻


 日本製エレキの進むべき方向性を決定づけてしまった(涜した、とも言える)1970年代のコピー戦争ですが、

★第一次エレキブーム終了後の67年頃からモズライトのはんぱコピーが現れ始め、
★67年の秋にはHoneyのリッケン・コピー(SG-5)が発売。これにより完コピ志向が本格化。
★68年には3種類の完コピ・モズライトが乱立(Zen-on MORALES&Arai Diamond&Mosrite Avenger)。
★グレコがレス・ポール・コピーの発売を始めたのが71年頃で、
★同じくグレコのフライングVコピーのカタログ初登場が73年(たぶん)。
★フェルナンデスのストラト・コピーの発売開始が73年頃。

というのが70年代前半までの流れでして、73年のグレコやフェルは既にはんぱコピーのレベルからは脱却し、ここから先は各社とも細部の詰めを競うようになります。
 という状況下での、この74年のテスコ(株)のカタログにラインナップされてるのは、いまだにはんぱテイストの漂うアレな感じのものもう一つこちらも)ばかりです。しかしこれらを製造したのはカワイ浅田工場で、つまりフェル&バーニーと同じレベルの製品を作れたはずなのに、なんでテスコはこうなのよ?という疑問はございますね。

 カワイの社内的には「テスコ=セカンド・ラインのブランド」という位置付けだったのかも知れません。しかしテスコのテレカスやSGコピー等は、現存する中古品があまり多くないので(むしろ稀少)、当時もそれ程売れてなかったと推察されます。70年代前半には日本製エレキの歴史を彩るもう一方の雄、通販系激安エレキが既に活動を開始してましたから、もはや「安いと」いうだけで数を売れる時代でもなくなっていたかも知れません。

 要するにこの時期までには、もはやテスコの出る幕はないという状況が完成しつつあったと。

テスコも通販に手を出してたかも知れない事を窺わせる痕跡もあるのですが。

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 このカタログに掲載されてるのはエレキ本体とアンプ、アクセサリーの他に、
★ボーカル用アンプとPAシステム
★ファルフィッサのオルガン
★エコー・マシン
★リズム・ボックス
などがあり、むしろテスコ(株)のメインの商材は金額的に大きいPAシステムと輸入物のオルガンで、それらの「片手間に」カワイのセカンド・ラインのエレキも取り扱う、という体制だったのかも知れません。このカタログは、
★商品写真専門のカメラマンが撮影を行い、
モデルを使用(もう1枚あります)
★梨地エンボス加工された高級感のある厚めの紙、A1サイズに両面カラー印刷、仕上げ用のラッカー・コートもされてる。
というもので、これは70年代前半の楽器カタログとしては、かなり高級なものです。テスコ(株)=大企業カワイの子会社なのですし、神田商会の作るカタログ等と比べても広告宣伝費はかなり潤沢だったようにも感じられます。

ただ、ページ仕立てではなくて、A1を折り畳んだだけという仕様がちょっと簡易かな。
梨地エンボスは高級感のある紙質なんですが、スキャナーを通すと凹凸があるせいか、いまいちぼそぼそな仕上がりになってしまい、画像ではこのカタログの高級感が伝わりにくいのが残念。
表紙のキャッチ・フレーズNEW SOUND IN……の部分を拡大してみると

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 でもこのカタログ、見た感じは全体に地味だし雰囲気暗いし、エレキのバックは場末のキャバレーの舞台照明みたいだしで、要するに21世紀日本人の目にはひたすらダサいものとしか写らないかも知れません。しかし74年当時は、これでも充分カッコいい、
ナウなヤングのための先端文化の雰囲気が横溢するナイス・ビジュアル
だったのかも知れないんですよね。少なくとも当時は、他社のカタログもだいたい似たような感じです。
 「流行文化」をその同時代人が評価するという行為には、それ独特の困難さが付いて回るものですから、今からさらに30年後くらいになってから、つまり80年代や90年代のカタログも等しく古文書化するのを待って初めて、このカタログに対しても公平な評価を与える事が出来るのではないでしょうか……

なんて、無理な擁護をする必要もないかな。やはりダサいものはダサいでおk?


画像上をクリックすると、各機種の拡大画像のウィンドウが開きます。
この色の文字のコメントはグリーン瀬戸様から頂いた補足情報です。


おまけ情報;
こんな地味な販促を展開中

2008/09/07
(改)2009/12/22
(改)2009/12/24


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