SONY SMS-1P

1998年(か99年)に発売されたソニーのスモール・モニター、SMS-1P。仕様の概略は、

・10cmフルレンジSP
・バスレフ型
・アンプ内蔵型
・出力は15Wで入力2系統
・キャビネット=バーチクル材、バッフル板=コーリアン(人造大理石)で重量3.2kg
・白と黒の2色

↑の画像はネットで拾った借用品だから白黒の両方が並んでるけど、私が所有してるのは黒です。1996年にRoland VS-880が発売されヒット商品となり、それが一通り行き渡った頃合い、つまり98年あたりから、「レコーディング用としての性能がそこそこ良く、なおかつアマチュアにも買いやすい価格のアンプ内蔵型モニター」の新製品が日本国内外の数社から立て続けに発売された一時期があった。

 私がSMS-1Pを買ったのは、よく憶えてませんがたしか1999年だったと思う。その直後にFOSTEX NF-1Aが発売され、早まっちまったかとアタマ抱えた記憶があります。しかし現在、私が宅録時に用いるモニターはヘッドフォンのみなので、わざわざ高額な方に買い換えたりしなくて正解でした。それに、数年前から不使用状態になってたこのSMS-1Pを2013年の秋、久しぶりに引っ張り出してきたのはモニター用としてではなく、KORG WAVEDRUMソフト音源を卓直せずに、スピーカーで鳴らしてマイクで拾う式で収音する、そのためのスピーカーとして使えないかと考えたからで、その場合には(高額な2way式のモニターよりも)小口径フルレンジ一発の方が好都合かも知れないのですね。

 ちなみに、Roland VS-880が登場するより以前の宅録マニア達がどんなモニターを使ってたかというと、そもそもVS-880以前のアマチュア用マルチ・トラック・レコーダーの大半は(というかほぼ全ては)カセットテープ式。トラック数はたったの4つ。だから音質どーこーなんて気にする人もあまりいなかったです。
「音の悪さは”中身”でカバー!」
みたいな脳天気なこと言うて。
 実際、アマチュアの作品なんてそれで充分なんですけどね。「プロ並み」の音質を求めるなら、それに見合った投資が必要である。逆に言うと、高音質なんてのは金で買えるもので、”中身”が良ければ金は後から付いてくるのだから、それを自分の財布だけで賄う必要はない。まあ現実はそう上手くもいかないですけど少なくとも、音質が良ければ”中身”も増量されるみたいな考えはまやかしで、その点カセットテープ時代の宅録マニアに余計な悩みは少なかった、とは言えるのかも知れない。

 もっとも、当時の人だって出来れば高音質であって欲しいとは思ってたわけで、カセットではなくオープンリール式のレコーダーを使う人もいた(まあかなりのお金持ちに限られますけど)。それでモニターは、音楽雑誌の熱心な読者等、情報収集に余念ない人が使うのはYAMAHA NS-10M(テンモニ)。あとはオーラトーンを真似たような自作っぽい何かとか。しかし大半の人は普通のオーディオ用スピーカーで済ましてて、どのみちそれらを鳴らすのは、やっぱり普通のオーディオ用のアンプ。テープレコーダー時代のモニターなんて、そんなものだったです。

 ところがVS-880が普及して以降に状況が変化し、アマチュア向けの「ちょっと高音質っぽい録音作業専用モニター・スピーカー」という新たな商品ジャンルが発生した。レコーダーが「プロ並み」になったのだからモニターも、それに相応しいのを使いましょうよという事ですね。SMS-1Pはその頃のヒット商品の一つでした。しかし現在の私には、これをモニター用に使おうという考えはありません。

理由その1;
宅録の作業手順的に、このサイズのモニターは不要である。
理由その2;
室内の機材配置的に、ちょっと邪魔っけである。

 ソフト音源に「空気を通す」ためのものとしては、本当はキーボード用アンプの類の方が適役なのかも知れません。けれど、新たにそういうのを買い足すよりかは、まず既に手持ちのSMS-1Pを試しておくべきであろう。それに、ソフト音源に空気を通すという目的に限って言えば、
「音的な個性が無い」
と評されるSMS-1Pよりも優れたキーボード用アンプがあるようにも思われない2013年11月現在です。

2013/11/29

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