ZEN-ON ZES-70
←サムネイルをクリックすると拡大画像が開きます。以下同様。

 ゼンオンのZES-70です。発売されたのは、リットーのビザール本によると1965年2月。

 ゼンオンがエレキの生産を開始したのは1963年5月。時期的に当然輸出がメインで、主にヨーロッパ製エレキ(イタリアのEkoやドイツのFramus)の模造品的なモデルを生産してたようです。65年のZES-70はフェンダー・ジャガーの縮小コピー。GSブームが始まればセミアコのラインナップを増やし、67年にはモズライトのコピー(ゼンオン・モラレス)に手を出すも、70年代を待たずしてエレキの生産は終了。

 60年代日本製エレキメーカーが辿るお約束のパターンそのまんまですね。


 ZES-70は弦長635mm、ボディ全長は約960mm。数字だけで見るととくべつ小型でもなさそうですが(ストラトと5cmも違わない)、実際に手に取ると非常に小型・軽量に感じられるエレキです。

 ボディ形状はフェンダー・ジャガーの縮小コピー。ピックガードがブリッジの周囲にまで伸びてる点もジャガーと同じ。また、ペグは木ネジ7個で固定する6連一体型で、ポストのピッチも狭く、同時期の日本製6連ヘッドよりはるかに小型。以上の点はフェンダーのエレキをよく真似出来てるのですが、PUはTeiscoのゴールド・フォイルに似ていて、ブリッジはグヤにそっくり。V/Tのノブもテスコのに似ています。

 ピックガードが雲形定規のような形である事から、これは美術学校あるいは工業学校出身の人が手がけたデザインなのかなという気もします。同時期の日本製エレキの中では、かなり「きれいにまとまってる」方のものですね。


 ロッドのカバーがありそうな位置には"STEEL REINFORCED NECK"と表記されたプレートが貼られています(ネジ止めではなく、接着剤で貼られているだけ)。
 これはネックの補強用に、アジャスタブルなロッドではなく、調整不可の鉄心が用いられているという事だと思います。Martinの"SQ"型番のロッドみたいなものですね。

ネックの直線性はなかなか良く、目視でほとんど真っ直ぐな状態が維持されており、弦高は1弦12Fで約2mmまで下げる事が出来ました。

そのかわり握りは太く、いわゆる「こん棒・丸太ん棒」タイプ。フレットもクラシック・ギター風の細いもので(60年代前半のテスコの、いわゆる針金フレットほど酷いものではありませんが)、あまり弾きやすいエレキではありません。


 PUはピックガードに直接ネジ止めされ、高さの調整は出来ません。PUの出力は低め。それが弦とはけっこう離れた位置に固定されてしまってるので、このエレキは音ちっさいです。音が良いとか悪いとか以前に出力低すぎるので、現代人の感覚からすると「使い物にならないエレキ」っていう感じがしちゃいますね。  コントロールは各PUのON/OFFスイッチと3ノブ。

3ノブの機能の内訳は記録無し。1V/2Tか2V/1Tのどちらかです。

 ピック・ガードは半透明・乳白色のアクリル板あるいはセルロイド。触った感じはアクリルほど硬くなく、塩ビほど粘らず、というものでした。

 ブリッジはピック・ガードの上に置かれています。ただでさえ音がアレなグヤ式ブリッジを、ボディに直接ではなく樹脂板の上に置いてるのだから、これはなかなか悲惨な設計であると申せましょう。

 先に述べたようにフェンダーをよく真似出来てる部分もあるけれど、肝心のPUとブリッジの研究・開発がおろそかだったのは、(見た目が良いだけに)残念な事でした。ゼンオンの他の機種にはPUが高さ調節可能なものもあり、また金属製ブリッジを持つものもありますから、ZESシリーズは廉価版的な製品だったのかも知れません。



各パーツ名をクリックして下さい。

2007/02/02
(改)2008/04/18
(改)2010/08/14


inserted by FC2 system