Guyatone LG-350T Custom "Sharp5" |
2015年2月に購入@ヤフオク。 私にとっての、この世で一番美しいエレキはグヤトーンのマロリー。そしてシャープ5。どちらもエレキとしての設計はイマイチで、実用性は低い。見た目がいいだけの、壁にぶら下げて眺めて楽しむための楽器ですね。 だがそれでいい。 自分がマロリーやシャープ5の事を知ったのは1978年頃。中学生の時だったです。つまりいわゆる「多感な時期」に、この、エレキ業界のスタンダードからは色々逸脱してるデザインを心底かっこいいと思ってしまった。そうなる火種は元々自分の中にあったのだとしても、それに着火してくれちゃったのはグヤトーン。これちょっと迷惑な話しだったかもで、この時に芽ばえた美意識は私の宿痾。しかし逆に、その元凶である製品の現物を手元に置いておけば、厨二の発作がぶり返すのを抑制するくらいの役には立ってくれるかも知れない。だから私にとってはこの2台は必要なものなのだとかなんとか。 ですが実際、マロリーとシャープ5、それとYAMAHAのSXっぽいと言えなくもないA5スタイルのフラマンを入手して以降、エレキを色々買い集めたいという欲は私の中から、ほぼ完全に無くなりました。 --------------------- シャープ5は1967年に発売されて以来ずっとグヤ社の看板商品で、2013年に倒産・業務終了するまで、約45年間に渉って販売され続けました。期間が長いだけに何度も大きく仕様変更されましたけど、私が好きなのは当然、中学生の頃に知った1978年モデル。型番LG-350の後ろに"Custom"が付くバージョンです。60年代のより現存数が少なく中古価格も高いのだけど、2015年2月に運良く、かなり安価で入手できました。 --------------------- グヤ社は1969年に1度倒産。その際に高崎の大工場を失い、以後はエレキを、木部から自社生産するのは止めたと思います。70年代前半のカタログに載ってるエレキは、テスコ絃楽器のOEMっぽいのとかが多いですから。 木部は外注で、アッセンブリだけは高井戸の本社工場で行ってたかも知れません。 1974年発売のマロリーと78年のグローリーは、高崎の工場を引き継いだユニ楽器が製造した。とはリットーのビザール本等に明記されてる事ですが、ではシャープ5はどうだったのか? 78年型は新設計といっても実は、旧型との主な違いは上記2点だけ。だけど私にとっては、とくに弦長の違いは大きい。モズライト・スケールなんて弾きづらすぎる。82年には再び設計変更され、弦長は再びモズライト・スケールに。という事もあって、私にとって一番良いシャープ5は78年型なのです。
↑の画像は入手した直後の状態。オリジナルはこの色でしたが、それをメタリック・ピンクにリフィニッシュしました。メタリック・ピンクというか、フェンダーのオプション・カラーのバーガンディ・ミストを少し赤に寄せたような色です。 この個体は所有者数名の間を渡り歩いてきた物のようなのだけど、その中で一度、蛍光ピンクに塗られてた事があった模様。オリジナルの塗装を剥がさず、その上からペンキをぶっかける杜撰改造。安物エレキの中古品ではよくある事です。 そしてこのみすぼらしいシャープ5がヤフオクに出品された2015年2月。ちょうどその頃私はYAMAHA SA-2000sのリフィニッシュを行ってたのだけど、それ用にクリアラッカーの1.6L缶を買って、しかしセミアコ1台に必要だったのは500mlくらいで、残りの1L以上が余ってしまってた。
重量は約4.3kg。重たいです。トレモロ・ユニットが大型だから等の事もあるけど一番の原因は、ボディ材のセンが重たいのだろうと思う。 フェンダー・ジャガー風のPUが3つ。トレモロ・ユニットもジャガー/ジャズマスのフローティング・タイプ式。弦間ピッチは狭く、1E-6Eが48mm。そしてボディの周囲はジャーマン・カーヴ加工されてる。60年代型の弦長はモズライト・スケール。 ・1V/1T 私にとって弦間ピッチが狭いギターはとても弾きづらく、シャープ5に実用性がないとする理由の大半はこれ。ジャガー系の音が欲しい時はたまにあり、ちょっと使うだけなら、弦間が狭くともなんとかなるかな。スライドで使うと、けっこう独特の音がします。
ポジション・マークは星形。1967年頃、日本のギター・メーカーの内の何社かが、インレイの装飾に凝り始めた。そういうのが秘かに流行ってたっぽい数年間がありました。無駄な労力でしかなかったけれど、見た目は良い。とくにシャープ5の場合、この星形ポジション・マークは78年モデルだけにしかない仕様なので、私的なプレミア価値は高いです。 フレットは前オーナーさんが打ち直したもので、まだ殆ど新品状態です。形状はやや太め。オリジナルがどんなか私は知らないけど、マロリーのフレットは概ねこのような形状。ともかくこれは弾きやすい。前オーナーさんには感謝!です。
1978年に新設計された製品だけど、ヘッドが無駄に大きいのは60年代のまま。これのせいでエレキ用のソフト・ケースには収まらず、持ち歩く際はベース用に入れるしかない、という点も60年代のまま。 トラスロッドカバーの形はマロリーと同じだけど、マロリーのはクリーム色の1P。シャープ5のは白黒の2P。共用ではないです。いちいち凝ってます。 私的に、見た目はほぼ完璧なシャープ5ですが、唯一残念なのはヘッド・ロゴの"LG-350 CUSTOM"がカジュアルな手書き風書体である事。これ、78年当時はちょっと斬新な意匠だったかもだけど、その後のバブル期以降になってからわりとよく見かけるようになり、今となってはむしろ残念な方の昭和の象徴だよね。一企業を代表する製品の「顔」に用いるべき書体ではないです。
ペグは70年代のグローバー製品なのだけど、オリジナルは高音弦用の3つだけで、低音弦用のはマロリーに付いてたものです。 オリジナルはゴールド・パーツですが、その金メッキはほぼ完全に剥落。そのおかげでマロリーのニッケル・メッキを混ぜても許される(という事にしてる)。このツマミ、本来は3:3ヘッド用の大型のもので、しかしシャープ5はそれを片側6連として用いる。しかも金メッキ品。それはかなりの特注仕様だから、ちゃんと直そうとするとお高くつきます。だったらGOTOHのステルス・キー等に交換する方が良い感じだけど、しかしこのエレキは基本、眺めて楽しむための物。そして表側から見る分には現状でもとくに問題ないですから、わざわざ手間とお金をかけてペグを新調なんて、そんな事はしない予定。 ボディ周りは概ねフェンダー風だけど、ヘッドにはわずかに角度があり、裏面には大きめのボリュートが。そういう所はモズライト風。 なおマロリーも、初期ロットのペグは、ギヤ・ケースのキャップが凸レンズ状のグローバーです。
トレモロ・ユニットはフェンダーのフローティング・タイプのほぼ同等品で、だから本来はロック・ボタンも付いてるのだけど、この個体のは欠品してます。 ペグ以外の金属パーツも全て金メッキ品ですが、その大半はハゲ落ちてしまってます。ただ、ブリッジのメッキだけは劣化してないとか、ピックガードの止めネジは前オーナーが新品に交換してるとか、つまり金属パーツの金ピカ度にはムラがある現状。これ本当は、同じ光り具合に統一させたいよね。 ところで私はなぜ、この色でリフィニッシュしたのか? 私にとってシャープ5は、この世で最も美しいエレキの一つだけど、そう思わない人もいる。というか、そう思わない人の方が多数派かも。少なくとも私はリアルの知り合い数名からシャープ5に対して、 ・気色悪いかどうか、ともかくシャープ5のボディ形状は独特。 ただこのセルは白なので、ボディも白だと目立たない。だからセルを引き立たせるため、ひいてはシャープ5独特の形状を強調するため、ボディは濃いめの色にすべき。しかもサイケな色に。ただ、目が痛くなるようなのはイヤですし、また、塗装に関しては素人同然の私が作業するため、微妙な中間色を調色するとかは、ちょっと自信ない。できれば有りものの中から選びたい。 バーガンディ・ミストは良い色だと思います。メタリック・ピンク=おサイケなもので、しかもバーガンディ・ミストは、どピンクほど派手ではない。むしろ落ち着いた感じがするくらい。しかも実は、60年代のシャープ5のイレギュラー・カラーにはメタリック・ピンクもあるんですね。シャープ5じゃないけど、Guyatone LG-120Tは、これがレギュラー色。この色のシャープ5も実在するという事です。バーガンディ・ミストよりもピンクに近い明るい色ですが、ともかくシャープ5をピンク系に塗り替えるのは、グヤの製品史からしても、そう突飛でもなく邪道な事でもない。 という事でリフィニッシュ色はGXメタルピーチに決定。それでプラモ屋で取りあえず一瓶買ったのだけど、現物を見た感じ、これだけじゃサイケ成分が足りないように思われ、同じシリーズの品番GX202、GXメタルレッドも混ぜる事にしました。配分はピーチ2に対してレッド1。これくらいの調色ならなんとかなる。その結果が↑に貼った画像。ってもデジカメ画像@パソコンモニタで正確な再現は出来ませんけど、概ね自分が意図した通りの色味にはなってくれてます。 プラモ用の塗料を楽器に用いる妥当性について、まずこれの成分は「合成樹脂(アクリル)、有機溶剤、顔料」との事。いわゆるアクリル系ラッカーってやつですかね。よく分かりませんが。 2016/08/06 ---------------------
■弦交換の記録
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