Danelectro Shorthorn Standard 5025
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この楽器はモモカワ君の所有物で、現在使用中のものです。mosrite Joe MaphisHagstromと共に、当コーナーに資料提供して頂きました。

ダンエレクトロのShorthornです。パーツ類はスタンダード用ですが、ボディはコンバーチブル用(丸穴は無し)という、少々珍しい仕様の製品ですが、これは1959年のカタログにスタンダードのブロンド、型番は5025として掲載されてるのだそうです。Neptune Bound(ダンエレクトロの研究本)にも載ってるそうです。

以上の件はだのじゃんさんから教えて頂きました。だのじゃんさんのブログはこちらです

この個体の製造年は、パーツの刻印から1965年頃と推定されるんだそうです(販売店談)。


このギターは現在使用中=実用性重視という事で、あちこち手が加えられています。

■ナット(オリジナルは金属製)→牛骨のものに交換
■ブリッジ(オリジナルはローズウッド・サドル)→現行ダノの金属製ブリッジに交換
■コントロール(オリジナルは2連ポット×2)→普通の1V/1Tに改造。
■ノブはテレキャス用。トグル・スイッチも交換してある。

これだけ手を加えて、楽器としてはかなり「まとも」になった(とくにブリッジ交換がポイント高し)が、やはりまだかなり弾きづらいらしい。
モズライトも普通の人間にとっては充分「弾きづらい」ギターなんですが、モモカワ君にとってモズは弾きやすいらしい。そのモモカワ君が「弾きづらい」というダノですから、その弾きづらさは
本気印
であると申せましょう。

重量は約2.8kgで非常に軽いです。その点では取扱いが楽なエレキであるのは間違いなく、持ち運びも苦にならない。ですので最近のモモカワ君はモズライトではなく、専らダノの方を使用してますね。

なおこの楽器のサンプル・サウンドはこちらのページにございます。


このヘッドの形はかっこいいですよね。Coke Bottleという呼び方もされるようです。

どういうわけか80年代日本製のジャパメタ御用達の代表格みたいなエレキに、このヘッド形状を模した製品がありました(偶然に似ただけかも知れませんが、やはりジミー・ペイジの影響力は大きいという事なのかも知れません)。

あちこちパーツ交換されてる楽器なんですが、このペグはオリジナル。これは悪評高きスケート・キーではなくて、初期型ダノに使われてるクルーソン製(ブランド表記はなし)。
スケート・キーに比べて全然「まとも」なペグなので実用上とくに不都合は無いが、やはり1音半以上のチョーキングをするとチューニングが狂うので、モモカワ君としてはロック式ペグに交換したいとの事。


ネック・ジョイントは3点止めで、ティルト機能があります。

ネックにはアジャスタブルなトラス・ロッドは入れられおらず、ノン・アジャスタブルな補強用の金属材が入ってます。ネックの直線性はよく保たれているようです。

ピックアップの高さ調整は背面から行います。


これが交換されたブリッジ。GOTOH製だそうです。ボディ表面の木目と併せ、お楽しみ下さい。

このブリッジは現行ダノ用のパーツであり、オリジナル・ダノ用のリプレイスメント・パーツではないので、互換性はない(かも)、つまり載せ換えるには多少の加工を要するのでは?


ヘッドのシールにはTOTALLY SHIELDEDとプリントされてます。これはノイズ対策のため「コントロール類のパーツ(Potとか)を銅箔で覆ってる」という事。

ハーモニーの製品でも配線周りのシールドはわりと入念に行われてます(ハーモニーの方法は金属製のチューブの中に配線を通す式)。そのかわりハーモニーのエレキは弦アースを取ってないんですね。ダノも(5〜60年代に製造されたオリジナルには)、弦アースは無いらしいです。

弦アースを取るための作業を省けば製造工程はかなり簡略化されます。とくにピックガードに電装アッセンブリの全てがマウントされてるモデルの場合は、ピックガード上の配線作業が完了してしまえば、あとはそのピックガードをボディにネジ止めするだけで作業終了。それは非熟練工でも可能な作業で、効率が良い。ですので、
「弦アースが無い=安物エレキならではの設計」
ではなかろうかと思ってましたが、もしかしたらそうではなくて、弦アースを取らないのは「感電事故防止」目的だったのかも知れないです。初期のロック界ではエレキ奏者の感電事故がわりとよく発生していたようですから。

弦アースを取ってある弦に触れるという事は、アンプのシャーシに直接指を触れてるのと同じ事(のはず。違ってたらゴメン)。この件に関しては後日、ちゃんと調べて書き直すかもです。


ボディ材はメゾナイト。合板(プライウッド)の一種で、木材チップを高圧で固めたもので、メゾナイトという呼び名は商品・商標名なのかも知れませんが、よく分かりません。主として建築・家具の方面で使われるもので、チップ・ボードという呼び方もされます。ともかく合板系素材は、安物エレキのある意味象徴ではございますね。

日本製エレキにはランバーコア(分厚いベニヤ板みたいなもの)がよく用いられましたが、流石にチップ・ボードまでには手を出さなかったというか、そこまで思い切った事は出来なかったと言いますか。それに比べるとアメリカ式の合理主義は、日本人の考える事の一回り上を行く感じがいたしますわね。

ボディ側面には美観と保護、および座奏の際の滑り止めのために、壁紙が貼られてます。製造されてから数十年経った現在でもこの壁紙はそれほど傷んではおらず、こういうところはホント、5〜60年代のアメリカの工業製品は品質が高いんだなあと妙に納得。

ボディ材は思いっ切り安物のメゾナイトですが、ダノの指板材はハカランダが用いられてるらしい。ですのでハカランダ信者の方は萌えるなりなんなり、好きにしてください。


近年のダノ再評価は、どちらかというとパンク系でチープでノイジーで破壊的で攻撃的な感じ等々の場面でふさわしいアイテム、という方向性が強いように思えますが、実際に手にとって間近で見てみると、これはどちらかというとシックで落ち着いた、上品な感じにデザインされたギターなんですよね。工業生産が好調で中産階級の層が厚かった時代のアメリカの道楽道具は、
「身の丈に合ったお洒落を楽しみたい中産階級のための文物」
という性格を強く持ってるようにも思えます。

日本でのエレキ・ブーム(1965〜)は「サーフ・インスト→ビートルズ→ニュー・ロックの台頭」という、ロック史上の重要な転換がほんの数年の内に目まぐるしく起こった時期と重なっており、そのてんやわんやな感じが製品デザインの上にも現れてますが、ダノはそれよりも約10年前から存在する。そういう点でも、日本の60年代大量生産エレキ(所謂ビザール)とダノは、(両方とも安物エレキなのではあるけど)全く同じようなノリのプロダクツではないのですね。

2007/11/10
(改)2007/11/17
(改)2007/12/01
(改)2009/08/18


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