1964年に発売されたTG-64TB-64用のトレモロ・ユニットです。
当サイト内通称をTG-Trmといたします。

使い方としては「ちょっとゆらゆら系」に限られますが、チューニングの安定度と操作感は良いです。音質も良い(ような気がする)。

65年の新製品YG-6/YB-6にも用いられています。

1962年発売のSS-4LSD-4L、63年発売のWGシリーズは、最初は箱形1号が使われていましたが、このTG-64を載せた個体もあり、つまりそれは「64年以降の出荷分」という事になりそうです。

TG-Trmが使われていた期間は64〜5の2年間で、遅くとも66年までには廃止されたのではないかと思われます。使われていた期間は短く、現存する個体も少ないように思えます。


アームやボディ側ザグリに埋め込まれた金具も含む全重量は約390g。デカくて重たいユニットです。


これはユニットの裏面。支点はナイフ・エッジです。また、ギターに取り付けるためにはザグリが必要です。

この「ナイフ・エッジ」と「要ザグリ」という二つの特徴を持つユニットは、テスコ製品の中ではこのTG-Trmが唯一のものです。

K-Trmも一応「要ザグリ」なんですが、あちらはほんのちょっと掘るだけでTG-Trmのような本式のザグリとは別物。

TG-Trmはフェンダー・ジャガー/ジャズマスターのトレモロ・ユニットを参考にして設計されたのかも知れませんね(形態模写としては不完全ですけど)。


これはザグリの中に埋め込む金具。可動支点のナイフ・エッジは、この金具の側にあります。

ボディに固定するのに要する木ネジは7本。現代の常識でなら、これくらいの大きさのプレートを固定するための木ネジは5本くらいでOKだと思うんですが、60年代日本製エレキに使われてる木ネジって、フェンダーのと比べ短くて細いんですね。硬度も低めかも知れない。日本製エレキはフェンギブ基準と比較して、ネジ類は多めに使われる傾向があります。


これはユニットの上部プレートとバネを支えるためのボルト。三角錐ナットの位置を上下することで、バネのテンションを調整出来ます。


TG-Trmの縁の下側3点セットが組合わさった状態。


それに上部構造物が組合わさって、このユニットは完品となります。TG-Trmは部品点数の多いユニットなのでして、

・ザグリに埋め込む金具
・バネ
・バネを支えるボルト
・バネを支える三角錐ナット
・上部プレート
・弦を引っ掛ける部分を隠すカバー
・アームを取り付けるための台座
・アーム
・以上の部品を組み上げるためのボルトが5本

という内容になっております。これだけの部品点数を用いますから、現存の個体では何かしらパーツ欠品してるものも多いですね。


ボディのザグリの形状はこんな感じ。


シンプルな形状のザグリです。


弦を引っ掛ける部分のカバーを外した状態の画像です。「櫛の歯」の長さがまちまちなのは、

従来のトレモロは音を上げ下げした時に、細い弦と太い弦とは変化が異なり良いハーモニーが得られませんでしたが、此のTB-64はテール・ピースで初めから同調してあるので、トレモロ使用に際しては常に美しいハーモニーが得られます。(1964年のカタログより引用)

この「同調」、つまりアームの操作時に各弦の音程間隔を保持するための工夫なのです。トランストレムの原始版ですね。こちらのタイプのユニットの、弦を通す穴の位置が違えてあるのも同じ理由で、これ全てモズライトのユニットをお手本にしてるのではないかと。

しかしこの「櫛の歯」は、3弦=巻弦のセット限定の形状です。それと6弦の溝はもっと長くなくてはいけない。というか「微調整不可」なんですから「常に美しいハーモニーが得られ」るかどうかは「運次第」といったところ。

2007/03/16
(改)2009/01/24
(改)2009/12/11



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