(お別れ録音)YAMAHA SC-7000、2011年4月

2011/07/12
(改)2017/08/28


 おおよそ1975〜85年の10年間がいわゆるヤマハ黄金期かと思いますが、その頃の不人気機種といえばSCシリーズ。その後期型の最上位機種、SC-7000。1980年12月発売開始で、82年に販売終了。

  • フェンダー・スケール/22フレットのスルー・ネック。
  • トレモロ・ユニットは2点支持式で安定性良好。
  • 3つあるPUのうちフロントとリアはトーン・ポットに仕込まれた隠しスイッチの操作で出力ブーストが可能。
  • ボディーのウイング材はアルダーで、全体の重量は3.6kg。適度な重量感があり扱いやすい。
  • ストラップで吊った時のバランスも良い。

全体に、非の打ち所のない設計だが需要もない、というようなエレキ。

 今回の個体はトレモロ・ユニット欠品、その他各部分もボロボロだったジャンク品を仕立て直したものです。トレモロ・ユニットはYAMAHA STH-500Rのを移植。アームの取り付け方がSC用とは少し異なる以外、各部寸法はSC用と全く同じなので、リプレイスしても問題なく使用出来ます。
 ペグもオリジナルではなく、SG用のイチョウ型ツマミのもので代用(オリジナルはキーストーン型)。

作例その1;

■ギター・アンプはYAMAHA YTA-25/マイクはAUDIX D1
■PUポジションは、
・リード=フロントで、ブーストSWをOn
・サイド=フロントで、ブーストSWはOff。トーンを目盛3(1/3絞りくらい)

■ベースはYAMAHA BB-1200(フレットレス改)
■プリアンプART DUAL MPを介して卓直
■DUAL MPの設定はInput/Outputの両方とも11時 High Z Inputを使用

■2011年4月12日+15日録音

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 SC-7000はグレコのGOと同じスルー・ネックのエレキだし、作られた時期もだいたい同じだし、弾きやすさも同等。という事で、録音ネタもGOと同じにしてみました。
・同じチェンジ
・同じテンポ
・尺も同じく2分以上使う
という条件を設定。手詰まり感が出てくるところまで自分を追い込む事を意図してます。
 ただし今回のはベースも加えたので、その分リード・パートの負担は少ないとは言える。やはり、リードがビートのアンカーを受け持たなくて済むのは気持ち的にずいぶん楽です(というわりには、小節アタマ拍から弾き出すフレーズばかりになってしまったのは何故だろう?)。

 それで、指癖フレーズを封印し、フレーズを吟味して云々というのもGOの時と同様ですけど、0:45頃からのフレーズがやたらと難しく、なんでかと思うほどすんなり弾けなかった。口惜しいので譜面化してみました。

*)i=人差し指/m=中指/ch=小指
i/m/chはクラシック・ギターの右手用の略記法。左指は数字を使うんだけど、タブ譜でそれをするとゴチャゴチャになるので、ちょっと変だけどこうしてみました。

 このわずか2小節足らずのOKテイクを作るため、何度弾き直したか分からない。それで集中力を使い果たしたせいか、これより後の部分はグダグダになった感があります。普段から弾き馴れていれば、とくに難しくはない運指かも知れないけど、レコーダーを回しながらその場で仕立て上げようとするから無理があるのか?

 アルペジオの音符12個で3オクターブ+3度を駆け上がるというフレーズ。これをスラスラ弾けるようになったら、たぶんいろいろ良い事がありそう(な気がする)ので、リックとして仕込んでおきたい。だから譜面に書き出しもしたんですが、しかしギターという楽器は音程を跳躍する効果が薄いからつまらないよね★

 仮に、この譜面をサックスで演奏するなら、最初の方はテナー・サックスの最低音域、最後の方はフラジオ音域になります(大抵のテナー・サックスの最低音は実音Abですけど)。
 テナー・サックスの低音域といったらばふん!と鳴るぶっとい音。そこから中域の滑らかなところを通って、フラジオのきーきーまで駆け上がる。その音色の変化幅は極めて大きい。しかしギターにはそれほどの変化は無くて、滑らかにスラスラつながってしまう。それがギターという楽器の特徴と言ってしまえばそれまでですが、メロディーを奏する楽器としては役不足ではなかろうか?

 ボーカルや管楽器なら1オクターブUPするだけでも、いかにも「高いところを使ってます☆」っていうアピールが出来るわけですよ。持って生まれた喉笛一つや、長さ10cmに満たないリード1枚きりで広い音域をカバーするのは無理があって、しかし無理があるからこそ、「声張り上げてます!」っていうケレンも表現出来るわけだ。
 ギターの場合は、低音用には太い弦、高音用には細い弦を使い分ける。合理的ですよね。しかし合理的な分、音域の使い分けや跳躍によって生じる効果は薄いのではなかろうか?というよりギターはやはり、メロディを弾くよりもコード弾きの伴奏に適してる。4度チューニングの弦楽器はコードを押さえやすい。メロディを弾くのに適してるのはバイオリン族の5度チューニング。だからギターで、わざわざ難しい思いをして広い音域を使うフレーズの練習をするなんてのは無駄かもね。でもまあ、ギターでメロディーを弾く時に心掛けてる事はいくつかあります。

  • なるたけポジション移動を多用する
  • 弦の長さ方向の運動量を多く使うのが得策
  • 単純素朴な、1弦琴を指一本で押さえる弾き方というのが基本にあって、実際は弦は6本・指は5本あるけど、それは1弦琴の機能を補助する程度のものである。
  • ギターは指先で弾くものではなく、腕全体、あるいは肩関節の運動で弾くべき。
  • 肩関節の動きを支持するのは腰。全ての運動の起点は腰。
  • 楽器は全身の運動として奏されるべきものである、等々

 つまり上掲の譜面は1弦琴の腕の動かし方を多弦上に展開するアイディアの一例とも言える。それで、こういうパターンを他に数種類仕込んでおいて、時々隠し味的に使えたらカッコいいんかもですけど、それはなかなか難しいって事ですね。

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 ついでに書いておくと、数オクターブにまたがる広い幅の変化だけでなく、半音という狭い音程の変化も、ギターはあまり美味しくない。例えばジョニー・ホッジスの半音ベンドは、ただそれだけで一個のドラマである。否、一個の事件であるとかなんとか。そういうのと比べるとギターのベンドはずいぶん大人しいというか、慎ましやかなものでございますというか、まあギターなんてしょせんギターだよなっていうか。ただダウン方向にズルズルずり下がっていく名演の実例はあって、

↑こういうのを聴くと、ギターもそう捨てたものじゃないとは思います。

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 それで、上記フレーズのOKテイクを作るのに疲れ果て、その後はグダグダ。なんか投げやりに弾き流す感じになったんですけど、投げやりならではの偶然の賜物といいますか、ちょっと面白いフレーズの生じた個所があるので、そこも譜面化しました。0:54頃からの1小節少々です。

 擬似Whole Tone Scale的とでもいいますか。いや完全4度5度を含んでる音型なんだから全音音階じゃないですけど、フレット2つずつ等間隔でダウンしていくゼクエンツであるという点が全音音階的。これは「バカっぽい指先の運動」なのでもあって、そこがつまり投げやりな感じなわけですけど、フレーズとして成立してしまったので、これちょっと面白いぞと思うわけです。弾き始めを1拍遅らせれば、

これでもOK。あるいは、

最後まで全音間隔で押し切ってもOKだったかも。ジャズ研ジャズのお約束からすると色々アウトなノートが含まれてるかもだけど、フレーズとしては成立してる。少なくとも私の耳には、これはぜんぜんOKなものと聴こえてます。バッキングのコードがベッタリ鳴ってると衝突して痛い個所も生ずるかも知れませんが、スペースがある状況なら大丈夫。

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という事で、
| C-7 | Bb-7/Eb7 | Ab | G7 |
という4小節のチェンジをぐるぐる回すだけという作例を、前回のGreco GOと今回のとで、合わせて5分間ほど録音しました。自分的にはもう目一杯やり尽くしたというか、もはやネタ切れと感じてますけど、本当はこのチェンジで可能な事のまだ100分の1も使えてないのではありますね。つまり例えば、真に音楽的な奏者が100人いて、その銘々がこのチェンジに取り組めば100通りの相異なるプレーが産み出されるに違いない。

だから音楽というのは、本当に無尽蔵なものである。汲めども尽きぬ泉である。

すごいよね☆


作例その2

■リードはYAMAHA SG-1000
■ギター・アンプはYAMAHA YTA-25/マイクはAUDIX D1
■PUポジションはフロント

■サイドがSC-7000
■PUポジションはセンター+リア

ベースは作例その1と同じ。

■ドラムは打ち込み。

■2011年4月12日+22日/6月17日+18日録音


 二つ目の作例もグレコのGOとお揃いにしてみました。今回はテンポ遅めのラテン系。エアジンが難しいのは、チェンジをパラパラトレースするだけの退屈な演奏になりがちなところで、だったらテンポ遅めで丁寧に弾く事を心掛けたら良い結果が出るんじゃないかと考えこういう設定を試みたんですが、

こ れ は つ ま ら ん

という結果でございましたね。なんなんだよこの音ゴミは?バッキングを、小節アタマで几帳面に切るパターンにしたのが不味かったかも。こういうのはやはり半拍前に食い込ませ、グルーブを横へ横へと流さないといかんのか?
 というような事よりも、丁寧にミスなくキチンと弾けてる的な音を鳴らしたいなら打ち込みで作れば良いのであって、わざわざリアルな楽器を奏する必要はない。切り貼り編集を施すとはいえ、実際にギターを弾いて録音する作業では、キチンと丁寧でルール通り「以上のもの」を常に志向してないとダメだ。まあこのお題は後日、再チャレンジいたします。

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 ヤマハのSG-1000は別項で既に記事にした青ペンキ塗りたくられのジャンク品を再生させたものです。元がそうだから改造して楽しむつもりだけど、その前に一度なるたけオリジナル状態近くに復元し、サンプル・サウンドも何通りか残しておくつもり。

 外観は、遠目に見る分には概ねOKなものだと思います。近くで見ると、ペンキを落とす時に削りすぎて木地の露出してしまった部分が多々あり、木地は露出してないがトップ・コートは落としてしまった部分も多く、トップ・コートの残ってる部分はヤマハの塗装特有の白濁が盛大に出てる。全体に、「もとジャンク」という出自は隠しようもないという有様です。

 PUは完調ですが、配線は、私はボディの中を電線が何往復もするレスポール式配線が嫌いだし、ハムをタップする必要もとくに感じないので、
 PU → トグルSW → Vol.ポット → アウトプット
という、ごくシンプルなものにしてあります。Toneポットはスイッチ無し。PUから出てるタップ用の細いリード線は撤去。コントロールは1V/1Tで、4つあるノブの内の2つはダミー。

 ヤマハのSGは音がキンキンというかカッチンカチンというか、ともかく硬い音のエレキだよね。基本、歪ませて使うためのものだと思います。普通ハンバッカーPUといったら、(クリーントーンでも)コンプかかったような音になってくれて、角を丸めて「もやかして」くれて、要するに「下手がバレにくくしてくれる」ものだと思うんですけど(少なくともGreco GOはそうだった)、ヤマハSGは、そういう親切設計のエレキじゃないようです。正直言って、これでエアジンを弾くのは辛かった。

 これを改造するとして、しかし素性がそんな音だからどうしようかという気持ちも少々。アンプで鳴らさない木地の音が既に、キンキン硬いんですよねえ。しかしギターの音は、例えばペグを替えただけでもかなり変化したりするので、まあしばらくは様子見ですね。


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