Teisco MJ-2L(ET-200)
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テスコのMJ-2Lです。この個体の裏面には"Teisco Del Rey"ブランドで輸出する際の型番ET-200のシールが貼られていますので、ページのタイトルには一応(かっこ付きで)ET-200の方も入れておきました。

MJ-2Lは、たぶん1963年に発売されたモデルだと思います(もしかしたら62年かも知れません)。67年になってもカタログに掲載されていたロングセラー・モデルです。


弦長は632mmで普通にミディアムスケールのギターなんですが、全長(ヘッド先端からボディ・エンドまで)は1023mm、ボディ幅(ホーン部)が265mmという、とても小型のギターです。

全長はZENON ZES-70の方が更に小さいのですが、ZENONの場合、全体のプロポーションは普通のエレキとそれ程違わないのであまり変な感じはしない(普通のエレキの縮小コピーみたいなもの)ですが、

「普通のエレキよりもはるかに大きいヘッド」と「普通のエレキよりもはるかに小さいボディ」

を組合せたMJは、何とも言えない妙な雰囲気を醸し出している製品です。いわば二等身エレキみたいなもの、でしょうか。

何とも言えない妙な雰囲気なんていう回りくどい言い方もアレでして、単刀直入に「ダサい・カッコわるい」と呼んで済ましてしまう人も多そうです。しかしこのボディ・シェイプ自体はマンボウとかハコフグその他熱帯魚を思い起こさせる「実は可愛い系」のデザインなのでして、

ですがこの特徴が生かされるのはクリーム・ホワイトにペイントされたMJ-3Lが登場して以降の事。地味なブラウン・サンバースト(しかもたぬき型)に大柄な金属パーツがゴテゴテと取り付けられていた時期のMJは、やはりダサ系に分類されるのが順当かも知れません。

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さて(少なくとも)63〜67年に渡って販売されたMJ-2Lですが、前期型/後期型では大きく仕様が異なります。

 65年のカタログ画像(Teisco Del Rey)66年のカタログ画像(日本国内用)
ヘッドタツノオトシゴ・ヘッド42ヘッド
PUフルアコ後付け用PUのソリッドへの転用ソリッド・エレキ用のもの
ブリッジBR62BR65
トレモロ・ユニット箱形1号K-Trm
ピックガードストライプなしストライプあり

という事になっておりまして、これはもうほとんど「別の製品」といっていいくらいの違いなんですが、型番は同じMJ-2L

それでこのページの画像の個体は、ブリッジはBR65ですがトレモロ・ユニットは箱形2号という中間的な使用。そしてボディ裏面には"Del Rey"ブランド用の型番ET-200のシールが貼られています。ところで"Del Rey"ブランドが登場するのは1965年ですから、この画像の個体が製造されたのは65年以降、という事になります……

とは単純に言い切れない闇な部分が常にあるのがテスコなのでして、例えば
「売れ残っていた在庫品の型番シールを貼り直して輸出用にしただけ」
という可能性なきにしもあらず。このPUとタツノオトシゴ・ヘッドの組合せはいかにも「初期のテスコ」っぽい仕様なので、それが65年になってもまだ製造され続けていたのかどうか。

とはいえ65年の米国向けカタログには初期型仕様MJの画像が載せられているのだから、少なくとも64年までは初期型が製造されていたのは間違いないのでしょう。
翌66年の新製品ラッシュ(KシリーズSpectrum 5SM-2LVegasシリーズEP-200L等)でラインナップの面目が一新されるテスコですが、その直前まではこういう、

「金属パーツはゴテゴテ無骨」
「ボディ・シェイプはグニャグニャ不気味」

なあれやこれや(SS-4LTG-64WGシリーズ等)が製品ラインナップの主力だったわけで……むしろ66年の「豹変っぷり」が際立つテスコです。この頃テスコに、一体なにが起こったのか?


Del Reyのロゴ・バッヂはたいてい小釘2本で打ちつけるものなので、それを剥がせば必ず跡が残るものです(Tロゴ・バッヂは跡を残さず剥がす事が可能です)。

この個体は、輸出用としてET-200のシールが貼られたものの、何らかの理由で「国内に留め置き」になったものかも知れません。


これが型番ET-200のシール。ちなみにDel Rayブランドの型番は、

MJ-11PU/トレモロなし→E-100
MJ-1L1PU/トレモロあり→ET-100
MJ-22PU/トレモロなし→E-200
MJ-2L2PU/トレモロあり→ET-200
WG-2L2PU/トレモロあり→ET-220
WG-3L3PU/トレモロあり→ET-300
WG-4L4PU/トレモロあり→ET-440
TG-643PU/トレモロあり→ET-320
K-4L4PU/トレモロあり→ET-460 Super Deluxe
TRG-11PU/トレモロなし→TRE-100
TRG-11PU/トレモロあり→TRT-110

という事になっております。トレモロの有無とPUの数は反映されていますが、ボディ形状の違いは分かりにくいうえ、TRG=TRE/TRTみたいなイレギュラーがあり、またベースやホロウ・ボディ類ではまた別のルールで型番が付けられています。


PUのON/OFFスイッチは「白いブランコ」タイプ。楽器用としては頼りなく、実用品としては良くないものですが、表示には(シールなどではなく)アルミ製のプレートが用いられており、それなりの高級感は醸し出されてる(ようにも思えます)。

PUは、木製の「台座」を介してボディに取り付けられています。

このPUがフルアコ用に単体で売られる場合は、6弦の下の丸い凹に小さなロゴ・バッヂが貼られるのですが、ソリッド・エレキ用として使われる場合は、その小さなロゴ・バッヂは貼られないようです。

エレキに載せられる場合は、その本体のヘッドにはロゴ・プレートが貼られているはずのものであるし、だったらPUにまでブランド・ロゴがあるのは蛇足だし、それよりもなによりも本体ヘッドのブランドがDel Reyだったり、あるいはKentだったりAuditionその他だったりするのに、
「PUにTeiscoのロゴが付いてるのは、ちょっとまずい」
というような判断があったかどうか。

ピックガードはWGシリーズのものと共通だと思います(実際に重ね合わせたり計測したりした訳ではないので、確信は無し)。

4個あるノブはレス・ポール式の配置で、一見したところでは普通にエレキっぽいのですが、機能の割り振りはなかなかユニーク(標準外)で使いにくいものです。

ON/OFFスイッチの位置も、もちろんこれじゃ「完全にダメ」なんですが、テスコはKシリーズでもこんなような位置にスイッチを並べているので……もしかしたら「テケテケ奏法」では
「べつにこの位置でもOK」
なのかも知れません(んなわけないとは思いますが)。


ピックガード裏面の配線。修理歴などの無い、オリジナルの状態のものと思います。

このギターに載せられているPUはパーツの写真帳の方で紹介しているものとは別の個体で、フロント/リアとも故障なく鳴っていました。

それで音の方の印象なんですが、良し悪し以前に、とにかく出力が小さくて。
配線を見てみると、これはわざわざ(ボリューム・ポット以外に)固定抵抗を入れて出力を下げているようです。

60年代前半頃までのアンプの設計とか、その当時のエレキのサウンドに対する捉え方(歪むのは良くない事とされていた)などの事情からこういう配線がなされているのかも知れませんが、現代人にとってこの付け足された抵抗は「蛇足・無駄」以外の何物でもないですから、MJを実用目的で所有している人ならば、この抵抗は外してしまった方がよいかも知れません。

タツノオトシゴ・ヘッドの「妙な大きさ」を強調するアングルから撮影。

なお「タツノオトシゴ・ヘッド/0フレットなし」という仕様は62年発売のSS-4LSD-4Lと共通ですが
「SSとSDは20フレット、MJは22フレット
という違いがあります。

ロッド調整用のナットがネック・エンドに飛び出していて、なおかつゴールド・フォイルPUを4つ並べるSS/SDには、
22フレットは無理
という事情があったのではないかと……

更に別アングルからの画像を。

ホーンが2本ある事から、これは(広い意味での)フェンダー系デザインと言える(かも知れない)のですが、その本家フェンダー製のどのギターにも「全く似ていない」独特のフォルム、これはむしろ70年代の初めに登場した超高級ハイテク・エレキ、ALEMBIC(アレムビック)を先取りしていた……あるいはもしかして

アレムビックの設計者はテスコを参考にしたのかも!

というところまで妄想を肥大させて、この項目を閉じたいと思います。



各パーツ名をクリックして下さい。

2007/03/23
(改)2008/04/18


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